糖尿病

糖尿病は、現代病の一つとして
多くの方が罹患している病です。

今は飽食の時代なので、
好きな時に好きな食べ物を
沢山食べてしまう方が増えています。
そういった飲食の偏りから
発症しやすい糖尿病ではあるが、
内臓が弱って糖尿病になることも
よく見受けます。

そこには遺伝的要素や
環境による要素、心因性のものなど
様々な問題が関わってくるが、
それらは全て内臓に影響を与えます。
逆に言えば、内臓がよく働き
普段から磨きあがっている人は
食べ過ぎ飲み過ぎがあっても
全然平気だったりします。
若い人の内臓はまだ元気なので
こういった無茶が効きますが、
年齢を重ねるとそうはいきません。

社会的に責任がかかる仕事が
増えてストレス過多になる方や、
出産や閉経を機に体質が
ガクッと弱ってしまった女性の方、
ただでさえ加齢によって
内臓の代謝が弱っているのに、
そういった負荷がかかると
糖尿病をはじめ内臓疾患に
罹る確率がグンと上がります。

西洋医学の薬は
血糖値を抑えることはできても
内臓の代謝を高めることはできません。
東洋医学における鍼灸術は、
内臓に伝わる経絡経穴を用いて、
中の代謝を扶けることが得意です。

 

ここでは糖尿病に関する
西洋医学と東洋医学の
見解をご紹介致します。

 

 

 

西洋医学の見解

 

ご飯やパン、果物などの
炭水化物を食べると
胃や小腸で消化・吸収され、
ブドウ糖となって血液中に入る。
血液中のブドウ糖の量(血糖値)
が高くなると膵臓から分泌される
インスリンの働きによって
エネルギーに変わり、
血糖値は約70120mg/dl
コントロールされる。

 

糖尿病

 

肥満、食べすぎや飲みすぎ、
運動不足等により
インスリンの分泌や働きに
障害が起こると糖尿病を発症。

 

高血糖が続くと、
全身の血管が痛めつけられ、
さまざまな合併症を引き起こす。

 

症状:

初期
血糖値が高い状態(高血糖)が
持続するだけなので、無症状。
しかし、持続的に高血糖が続くと、
血管は確実に傷つき、進行すると
様々な自覚症状が表れる。

糖尿病

 

 

・多尿
糖は尿に出るときに、
同時に水分も一緒に出すために
尿の量が多くなる。

 

・口渇、多飲
多尿のため脱水状態となり、
のどが渇き、
水分をたくさん飲みたくなる。

 

・体重減少
糖が尿に出るために、
体のタンパク質や脂肪を利用して
エネルギー源とするため。

 

・易疲労
エネルギー不足と、
体重減少により疲れを感じやすくなる。

 

 

経過

1型糖尿病

尿が増える、のどが渇くといった
症状が急に起こる。

 

 

2型糖尿病
気づかないうちに発症し、
ゆっくりと進行。
症状が無い状態のまま、
糖尿病が進行していることがあるので
血糖コントロールを行わずにいると、
合併症を引き起こす。

患者さんによって経過は異なるが、
早期では食事や運動で
血糖コントロールができるが、
年を追うごとに難しくなり、
内服薬やインスリン注射による
治療が必要になる。


治療によって血糖値が
ほぼ正常にまで改善しても、
糖尿病そのものが治る
というわけではない。
治療を中止すると、
ふたたび血糖値は高くなってしまう。

 

 

合併症

血糖値が高い状態が長く続くと、
合併症が起こる可能性が高くなる。
治療をきちんと行い
血糖コントロールをすることで、
新たな合併症が起こるのを防いだり
起きてしまった合併症の進行を
抑えることができる。

 

糖尿病

・糖尿病網膜症

網膜の血管が障害され、
目のかすみ、視力低下などがあらわれ、
症状が進むと
失明してしまうこともある。

 

・糖尿病腎症

糖尿病により腎臓の働きが悪くなると、
血圧が上昇する、尿中にたん白が出る、
体がむくむなどの症状があらわれる。
さらに症状が進むと、
血液中に老廃物がたまり、
腎不全や尿毒症など生命にかかわる
重篤な症状を引き起こす。
このように慢性に経過する
腎臓病のことを
慢性腎臓病(
CKD)という。

なお、腎不全になってしまうと、
人工透析を受ける必要が出てくる。

 

 

・糖尿病神経障害

神経と神経の周りの
細い血管が障害され、
信号がすばやく体のすみずみまで
伝達するという働きが低下。
手足の痺れ、ほてり、痛み
などがあらわれ、
一方、足の感覚が麻痺して、
傷があったとしても
気づかずに放置してしまい、
足の潰瘍や壊疽になることもある。

 

糖尿病

 

 

 


東洋医学の見解

 

中医学の文献には
糖尿病という病名はないが、
消渇証が糖尿病によく似ている。

 

消渇証の「消」は
痩せるという意をもち
糖尿病患者が多食するにもかかわらず
痩せているという特徴に類似している。

 

「渇」は口渇を意味し
これも糖尿病の特徴である。

 

 

◎分類

消渇証の分類法はいろいろあるが
病因の存在する部位によって
上消・中消・下消の3つにわける
分類法が最も適当と思われる。

 

《医学心悟》
「渇而多飲為上消、消穀善飢為中消、
口渇、小水如膏為下消
(口渇して多飲する者は上消となし、
消穀善する者を中消となし、
口渇して尿濁する者を下消となす)
とある。

 

 

病因病機

①飲食失調

油っこいもの、甘いもの、
辛いものの多食、
または飲酒によって脾胃が傷害され
運化作用が失調することによって
食物・水液が停滞して湿となる。

湿は熱を生み湿熱に変わると、
舌苔厚、口臭などの症状が現れる。
水湿の停滞によって津液の代謝が
悪化し不足すると、
咽が乾く、水をのみたがる
といった乾燥症状が現れる。

湿の停滞と口渇が同時にみられるのは
矛盾するようであるが、
湿は停滞すると重濁・粘滞の性質があり
熱の運動エネルギーは上昇するため
頭部に熱が集まり口渇が生じるのである。

 

糖尿病

 

②情緒失調

怒り、ストレスなど
情志の変動によって肝気は鬱結する。
長く停滞した肝気が化熱して
上へ昇ると、
目の充血、
いらいらする、怒りっぽい、
頭痛、不眠などの熱症状が現れる。
偏盛した熱が陰を消耗し、
体内の水分が不足すると口渇がおこる。

これは緊張した精神状態が、
肝気鬱結をおこすためである。

 


③腎虚

腎精が不足して陰虚火旺になると、
虚火が上炎して、微熱、 咽乾、ほてり
などの熱症状が現れる。

また虚火は上行して肺を灼熱するため、
肺の通調水道の機能は失調して
水液の代謝に異常がおこり、
多尿、頻尿の症状がおこる。

腎精不足をひきおこす原因には、
先天 (生まれつき・遺伝) による
精の不足と、性生活の不節制による
精の消耗、過労、慢性疾患、
および重病による腎陰の消耗
などがあげられる。

 

《外台秘要・消渇消中》
「房室過度、至令腎気虚耗、下焦生熱、
熱則腎燥燥則渇、腎虚不得制水液、
故随飲小便」

 

訳:
房室過度は腎気を消耗せしめ、
下焦に熱を生ず。
熱は腎を燥し、燥して渇く
(全身の症状)
腎虚して水を制することを得ず、
飲むにしたがいて小便す

 

 

④五臓六腑の弱り

臓腑が虚弱であると、正気が不足し、
消渇を生じやすい。
また、虚熱などの内熱の発生も
本病の原因となる。

 

《霊枢・五変篇》
「五蔵皆柔弱者.善病消癉.」
五臓皆柔弱なる者は、善く消癉を病む。

《霊枢・本臓篇》
「心脆.則善病消癉熱中」
心脆ければ則ちよく消癉熱中を病む。

 

「肺脆.則苦病消癉易傷.」
肺脆ければ則ちしきりに
消癉を病み傷られ易し。


「肝脆.則善病消癉易傷.」
肝脆ければ則ちよく消癉を病み
傷られ易し。


「脾脆.則善病消癉易傷.」
脾脆ければ則ちよく消癉を病み
傷られ易し。


「腎脆.則苦病消癉易傷.」
腎脆ければ則ちよく消癉を病み
傷られ易し。

 

消渇証は主に
多食、情志失調、腎虚が原因となって、
肺燥、胃熱、腎虚
の病証が現れた症状である。

3つの証に共通してみられる口渇は
燥熱が陰を消耗することによっておこる
陰虚症状である。

この陰虚はさらに
熱の勢いを発展させる
という悪循環をくりかえすため、
消渇の主な病機は陰虚燥熱であり、
陰虚が本、燥熱が標とされている。

 

 

①肺熱傷津(上消)

飲食不節による胃熱や
精神刺激による心火・肝火、
腎陰虚火旺などにより生じた
火熱が肺に上擾し、
陰虚燥熱から上消渇となる。
肺の宣降失調から
全身に津液を輸布できず、
陰虚燥熱が悪化。
燥熱により気や津液を損傷すると
気陰両虚を生じる。

 

《素問・気厥編》
「心移熱於肺.伝為鬲消.」
心、熱を肺に移せば、
伝わりて膈消となる。

 

糖尿病

 

胃熱熾盛(中消)

飲食不節や気鬱化火などにより
燥熱を生じ脾胃を傷ると、
胃火が盛んとなり脾陰が不足し
陰虚燥熱となり、中消渇となる。
脾気の不足が生じると
水穀の精微が輸布されず下へ流れ、
小便となるため尿に甘味が生じる。
また、肌肉が水穀の精微により
濡養されず徐々に消痩となる。

 

《素問・脈要精微論》
『癉成為消中.』
癉成れば消中を為す。

 

糖尿病

 

 

③腎陰虚(下消)

腎陽は真陽・元陽と呼ばれ、
腎陰も真陰・元陰と呼ばれ、
全身各臓腑の陰陽の根本となっており
腎陰も腎陽も共に
腎の精気がその物質的基礎になっている。

腎陰が不足すると虚熱が生じ、
心肺を灼傷すれば口渇引飲。
脾胃を犯せば胃熱を生じて
消穀善飢となる。
また腎気の不足から
開闔失調すると小便頻数量多、
尿混濁などの症状がみられる。

久病となると
腎陰虚から陰損及陽により、
腎陽虚を発生し腎の陰陽両虚となる。

 

《素問・刺熱論》
『腎熱病者.先腰痛.
脛痠苦渇数飲.身熱.』

腎の熱病の者は、先ず腰痛み、
脛がだるくなり、渇に苦しみ、
数しば飲み、身熱す。

 

 

④瘀血

消渇変証(合併症)は、
心筋梗塞、脳梗塞、痺れや痛み
などの神経障害、白内障、網膜症、
皮膚疾患などの瘀血が
関与するものが多くみられ、
消渇の基本病理は陰虚燥熱だが

この病態が長く続くと更に津液が消耗、
血液粘度が高くなり瘀血証を併発する。

 

 

鍼灸についてのQ&Aはこちら
Q&A

 

"是非、施療を受けてみたい!"
施術希望される方や
"自分の症状でも診てもらえるのか不安…"
という方はお気軽にご相談ください。

CTR IMG