下痢
【原因不明の下痢】
短期間の下痢は
過食や飲み過ぎの可能性があり、
本能的な下痢
(便で出してスッキリさせようとする
内臓がしっかり機能した上での下痢)
なのでそのまま様子をみて
問題ない場合があります。
急性胃腸炎や慢性的な下痢に関しては
消化器官に何か問題がある場合があり
ただ、病院の検査で調べても
何も異常がない場合もあります。
まだ病が形になっていない段階なので
東洋医学ではこれを未病といいますが、
未病の段階の下痢でも
体の傾向や病の特徴がわかれば
治療方法があります。
ここでは下痢に対する
西洋医学と東洋医学の
見解を述べております。
西洋医学の見解
下痢とは、
水のような液状の便が
1日に何回も出る状態です。
通常は1週間以内に治り、
治療が必要ないことも多いです。
しかし下痢が1か月以上続く場合は、
お腹の病気以外の可能性も考えられます。
1週間以内で治る下痢
過食・飲みすぎ:
食べすぎたりお酒を飲みすぎたりすると、
消化が間に合わなかったり、
その刺激でおなかをこわす場合があります。
急性胃腸炎:
バイ菌が食べ物や水と一緒に入ってきて、
胃や腸を傷つけます。
下痢の他に嘔吐や熱、
おなかの痛み、ときには便に血が混じる
などの症状が出ます。
薬:
抗菌薬は下痢の原因になります。
抗菌薬は特定のバイ菌を
やっつけるお薬であり、
ターゲット以外のバイ菌を
元気にしてしまうことがあります。
また、抗がん剤も下痢を起こします。
数日たってもよくならない、
どんどん症状が強くなる、
まったく水が飲めないような場合は、
病院を受診してください。
1ヶ月以上治らない下痢
・過敏性腸症候群:
数ヶ月にわたって腹痛に悩まされたり、
おなかの張りが続いたり、
定期的に便秘と下痢を繰り返したり
することがあります。
環境の変化などストレスで
症状がでたり悪くなったりすることが特徴で、
検査をしても、腸の壁の荒れや
ポリープなどの異常は見つかりません。
大腸癌:
初めは何も症状がなく、
気づかれにくい癌です。
進行して癌が大きくなると、
便秘気味になったり
下痢と便秘をくり返すようになったり、
便に血が混じる、便が細くなる、
体重が減ったといった症状が出たりします。
潰瘍性大腸炎・クローン病:
どちらも腸の炎症が長く続く病気です。
下痢とおなかの痛みがずっと続き、
熱がでたり便に血が混じることもあります。
下痢の治療
急性下痢の場合は、
特に治療をしなくても
自然と良くなることがほとんどです。
つらい症状がある場合や
原因が分かる場合は、
次のような治療を行います。
・整腸剤
・薬が原因と思われる下痢の場合
薬を中止する。
・下痢止め薬は使いません。
・脱水を起こしている場合、
点滴による水分補給などを行います。
東洋医学の見解
腹瀉は「泄瀉」ともいい、
泥状あるいは水様の便で、
排便時にテネスムスを
ともなわないものを指す
(小腸性の下痢に相当する)。
古医書中には多数の名称があり、
また各種の分類がある。
《内経》
では泄瀉の症状と
大便の性質にもとづいて
「飧瀉」 「洞瀉」「溏瀉」
「水瀉」「濡瀉」
などと名づけられている。
《難経》
臓腑によって
胃瀉・大腸瀉・小腸瀉
などに分類されている。
後世の諸家は、外感によるものを
湿・火・気・痰・積などの腹瀉に分け、
内傷によるものを脾虚の腹瀉・
腎虚の腹瀉・肝脾不和の腹瀉・
食積の腹瀉などに分けている。
《傷寒論》《金匱要略》
「利」「下利」と称し、
不消化の食物をそのまま排池するのを
「下利清穀」としている。
ただし 「痢疾」 も 「下利」
と記しており、
腹瀉と区別するために時には
「下利膿血」 「熱利下重」
などと書いている。
腹瀉と「痢疾」は異なり、
《類証治裁・泄瀉門》
「泄は水穀を分たざるにより、
病は中焦にあり、
痢は血脂傷敗するをもって
病は下焦にあり、
中焦にあるは脾胃の湿を分利し、
下焦にある肝腎の傷を調理す」
と述べている通りである。
(1) 湿熱と寒湿
いずれも湿邪によるが寒熱の違いがある。
湿熱は陽明を、寒湿は太陰を
傷害することが多い。
湿熱
湿熱の邪が胃腸を傷害して
昇降と伝導が失調し、
清濁が分かれないために発生する。
特徴:
黄褐色の水様便で悪臭がある。
肛門の灼熱感・腹鳴して痛む・
腹が痛むとすぐ排便する・
排便後もスッキリしない・
口渇があり飲みたくない・
舌苔が黄膩など
みられ
《内経》
「暴注下迫は、皆熱に属す」
に相当し、また湿は陰邪で性質が粘膩
であるところから、
上腹部が痞えて苦しい・
体が重だるい・食欲不振を呈する
ことである。
寒湿
寒邪によって
脾胃の昇降と運化が失調し
飲食物が消化されないために発生する。
特徴:
腹鳴とともに水様便が生じ、
悪臭がなく腹痛があり
暖めると軽減し、
腹部の膨満・口渇がない・
舌苔は白脈などの
寒湿の症候をともなうことである。
(2) 食積と肝脾不和
いずれも実証の腹鴻で、
腹が痛んで鴻下するが、
病因・病理機序が異なる。
食積
脂っこい物・なま物・冷えた物
などを食べて、
脚胃の運化機能が失調し、
宿食が中焦に停滞したために発生する。
特徴:
腹が膨満して痛み、
排便後に腹痛は軽減するが、
しばらくするとまたくり返し、
便は水様で腐卵臭があり、
不消化の食物残渣が混じり、
腐臭のある噯気・呑酸・厭食・
舌苔は苔膩などの
食滞の症候を呈することである。
肝脾不和
肝気が脾に横逆したために生じ、
気滞が主であり、
精神的刺激や緊張によって誘発される。
《景岳全書、泄瀉》
「およそ怒気に遇えばすなわち
泄瀉をなすは、必ずまず
怒時に食を挟むをもって
脾胃を傷るを致す、
ゆえにただ犯す所あれば
すなわち触に随いて発す、
これ肝脾二臓の病なり、
肝木は土を克するをもって
脾気受傷して然り」
と述べている通りである。
特徴:
腹鳴につづいて水様便が出て、
その後も腹鳴が軽減しないか
さらに増強し、脇部の振った痛み
あるいは遊走性疫痛があり、
同時に食欲不振・口が酸っぱい。
噯気・放屁などの症候がみられることである。
(3) 熱結傍流
陽明附実証の一形態で、
熱邪と燥尿が互結したために生じる。
外邪が裏に入って化熱し
腸内の燥尿と結するもので、
もうひとつは少陰病が熱化して
腑気を停滞させたものである。
特徴:
まず便秘し、続いて悪臭ある
水様便が始まり、
腹満・腹痛と圧痛・
時に硬い糞球がまじる
気持よく排便しない・臍周囲の疼痛
などの症候を呈することである。
(4) 脾虚と腎虚
《景岳全書・泄瀉》
「久瀉は火なく、
多くは脾腎の虚寒によるなり」
と述べているように、
いずれも虚寒の腹瀉であるが、
脾と腎の違いがある。
脾虚
脾は運化を主り、清気を昇らせ
精微を輸布するので、脾虚の体質・
寒湿の邪の直中による脾陽の阻滞などで
運化が失調すると、
清陽は昇らず濁陰は降らなくなり、
津液と槽粕がともに大腸に下るために発生する。
《素問・臓気法時論》
「脾病めば、…虚すればすなわち腹満・
腸鳴・飧池し、食化さず」 と述べている通りである。
特徴:
水様便や不消化便あるいは
鴨糞のような便がみられ、
腹痛があり温めたり押さえると軽減する・
なま物や冷たい物を食べると
水様便が増強するなどを呈することである。
腎虚
腎陽すなわち命門門の水が衰えて
蒸化することができないために
ひきおこされ、
「五更泄瀉」「五更瀉」「晨世」などと言われる。
特徴:
早朝に臍周囲が痛み、
腹鳴して水様便や不消化便を
排出した後に楽になり、
腰や膝がだるく無力・尿量が多くうすい・
夜間多尿などの
腎陽虚の症候をともなうことである。
《景岳全書・泄瀉》
「今腎中の陽気不足すれば
すなわち命門の火衰えて、
陰寒は独り盛んなり、
ゆえに子丑五更の後、
陽気いまだ復せず、
陰気盛極の時にあたり、
すなわち人をして洞泄止まざらしむ」
と述べている通りである。
脾虚と腎虚は密接な関係があり、
脾虚の泄瀉が長期間続くと腎に波及し、
脾腎陽虚となる。
特徴:
食べるとすぐに腹鳴・腹痛して
水様便を排出し、食べなければ何事もなく、
毎食後に必ず瀉下することで、
俗に「禄食瀉」または「漏食瀉」ともいう。
腹瀉が長期間続いて脾腎陽虚となり、
真火が水穀を腐熱することが
できなくなったために発生するのである。
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