めまい
メニエール病は
耳鳴りや耳の詰まった感じとともに
突然起こる回転性のめまいで、
めまいが激しい場合は
吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
強いめまいは数十分から
半日程度で治まりますが、
耳鳴りや難聴はめまいを
繰り返す内に悪化する傾向があります。
メニエール病は、
内耳に正常に存在している
液体の量が過剰になることで
起こると考えられています。
西洋医学では上記のように考えますが、
東洋医学では
耳という器官は内臓から送られてくる
血液やリンパに栄養され機能している為
内臓がしっかり機能していれば
内耳や三半規管を栄養して
聴覚や平衡感覚が保たれますが、
内臓が弱ると耳が栄養されず
耳鳴りや難聴、三半規管が弱ると
めまいがするといった
症状が出ると考えます。
メニエール病によるめまいや
良性発作性頭位めまい症といった
疾患でも対応しております。
西洋医学の見解
メニエール病は
激しい回転性のめまいと
難聴、耳鳴り、耳閉塞感
を繰り返す疾患。
内耳を満たしている
内リンパ液が過剰にたまる
“内耳リンパ水腫“が原因で起こる。
めまいの発作は
数分で治まることもあれば、
数時間続くこともある。
発作の間隔も週1回程度から
年1回程度と個人差が大きい。
30〜50歳代に多く、
高齢者には少ない。
発症後1~2年程度で
軽快することが多いが、
数年以上にわたって続く場合もある。
発作を繰り返すことで
耳鳴りが慢性化したり、
難聴が進んだりすることもある。
薬の服用による治療が一般的だが、
難治性の場合は
外科的処置を施すこともある。
耳は、
・外耳
・中耳
・内耳
に分けられ、
鼓膜よりも外側が外耳、
鼓膜とその奥にある鼓室、
鼻腔につながる耳管を中耳と呼ぶ。
内耳は中耳の奥にある器官で、
聴覚に関与する蝸牛と、
平衡感覚に関与する
前庭および三半規管で構成される。
内耳全体は膜迷路と呼ばれる膜で
仕切られた2重のトンネル構造に
なっていて、
膜の外側はナトリウム成分の多い
外リンパ液、
内側はカリウム成分の多い
内リンパ液
という2種類の液体で満たされている。
何かの原因で
内外リンパ液のバランスが崩れ、
内リンパ液が増えすぎると、
圧力で内耳が膨れ上がる。
この状態が内耳リンパ水腫。
内圧がさらに高まって
膜迷路が破れると、
内外のリンパ液が混ざり合って
感覚細胞が刺激を受け、
めまいの発作が起きる。
内リンパ液の流出によって
内圧が下がると、
破れた部分が癒着してふさがり、
発作が治まる。
メニエール病では
この一連の過程が繰り返される。
症状
疲れ、ストレス、睡眠不足が
誘因となることが多く、
難聴、耳鳴りの増悪を随伴する
回転性めまい発作が発現・消退
を繰り返す。
難聴は低音障害型難聴から始まる。
めまい発作は、
10分以上続く回転性を基本とするが、
浮動性の場合もある。
進行すれば、
中高音域にも感音難聴を生じ、
全周波数に増悪していく。
症状の推移に関しては、
発作期と間歇期がある。
・発作期
強いめまい、難聴、
耳鳴、耳閉感、聴覚過敏
・間歇期
強いめまい症状はないが、
症例によっては不定の浮動感など
を訴える。
聴覚症状は軽減するが、
軽度残存することが多い。
難聴は罹患期間が長期化して
発作を反復するにつれて
次第に高度化する。
経過中に反対側の聴力変動が発生し、
両側化する場合がある。
治療
めまいの発作が起きている間は、
横になって安静を保つ。
めまいや吐き気がひどいときは、
応急処置として内耳循環改善薬、
制吐薬、炎症を抑えるための
ステロイド薬、抗不安薬
などが投与される。
症状が比較的軽い場合は、
内服治療で症状の改善を待つが、
症状が重い場合は
注射や点滴を行うこともある。
発作が治まった後は、
メニエール病の原因である
内リンパ水腫を軽減するための
利尿薬をはじめとして、
ビタミン薬、自律神経調整薬、
抗不安薬、副腎皮質ホルモン薬
などによる内服治療を行う。
難治性の場合は、
経鼓膜的に内耳へ
薬を注入する局所治療や、
内リンパ液を減らすための手術、
前庭神経を切除する手術
が試される場合もある。
東洋医学の見解
頭暈とは、目がかすんで頭がふらつき、
物が揺れ動いてみえることで、
乗り物に乗っているような感じがする。
激しいときには目を開けると
周囲が回転して立っていること
が出来ず、
悪心・幅吐し、倒れることもある。
古人もめまいについて
多くの研究をなされており
古医籍ではさまざまな
名称が用いられている。
《素問》
「頭眩」 「掉眩」 「徇蒙招憂」
《霊枢》
「眩冒」「目眩」「眴仆」
《金匱要略》
「冒弦」 「癲眩」
《諸病源候論》
「風舷」
《聖恵方》「頭旋」
《三因方》 「眩暈」
《済生方》「眩運」
清代以降は、
「弦量」「頭量」と呼ばれ
目がかすんで頭量が生じるのを
「目眩」、
頭暈ののちに目がかすむのを
「巓弦」
激しい頭量があり眼前が暗くなるのを
「眩冒」
と呼ぶが、これらに本質的な差はない。
・肝陽化風
《素問・至真要大論》に
“諸風掉眩、皆属於肝。“
「諸風掉眩はみな肝に属す」
とあるように、
平素より陽盛火旺が肝陽上亢したり、
怒りや悩みがうっ積して気鬱化火し、
肝陰が消耗されて肝風内動が生じ、
風火が上擾して頭量が生じる。
特徴:
《素問玄機原病式・五運主病》
「風火はみな陽に属し、
多くは兼化をなし、陽の主は動にあり、
両動相搏すれば、
すなわちこれ旋転をなす」
風火が上部を援動するために
ふらつき・めまい・
張るような痛みが生じ、
怒ると肝火が激しくなるので
症状が増強し、
風火が心神を乱すので
いらいら怒りっぽい・眠りが浅い・
夢をよくみる・口が苦い。
治法:
清火熄風・平肝潜陽
中年以上で風火眩暈をみるときは、
中風 (脳血管障害) の前兆
であることが多いので
適切に治療して予防する必要がある。
・陰虚陽亢
肝陽化風と同じく
眩暈・イライラ・不眠など
の陽亢の症候がみられるが、
肝陽化風は実証に偏し本証は
虚証に偏っている。
陰虚陽亢の頭暈は、
腎陰虚の体質や慢性病・熱病などで
陰液が消耗したことにより
腎陰が肝陰を滋潤できず肝陽上亢を
ひきおこしたために発生する。
すなわち、陰虚が主体である。
特徴:
陰液不足で頭が濡潤されないために
ふらつき・目まい・
目の乾燥感や異物感があり、
腎陰不足から心腎不交が生じて
焦躁感・不眠・夢をよくみる
などの症状がみられ、
陰虚内熱のために
手のひらや足のうらのほてり・
盗汗がある。
・心脾両虚と中気不足
いずれも虚証であるが、
気血両虚と気虚の違いがある。
心脾両虚の頭暈は心は
神を蔵し血脈を主り
脚は統血し意を蔵すので
過度の心労、思考などで
心脾が損傷して気血が消耗したり、
大病や大出血で
気血が不足して発生する。
中気不足の頭暈は、
過労による元気の消耗や
脾胃虚弱の体質のために
中気不足となって発生。
特徴:
《霊枢・口問》に
“上気不足、脳為之不満、
耳為之苦鳴、頭為之苦傾、目為之眩。“
「上の気不足すれば、
脳これ不満をなし、
耳これ苦鳴をなし、
頭これ苦傾をなし、
目これ眩をなす」
とあるように、
気虚で清陽が昇らないために
頭のふらつき・目まいが生じ、
耳鳴・いねむりする・
横になりたがる・倦怠無力・
話すのがおっくう。
息切れ・食欲不振・軟便などの
気虚の症候をともなう。
・腎精不足
腎は精を蔵し髄を生じ、
先天の本であるから、
先天不足・老化による
腎気の衰弱·房労過度などで、
腎陰が消耗して、
髄が不足するために
頭暈が発生する。
《霊板・海論》
“髄海不足、則脳転耳鳴、
脛痠眩冒、目無所見、懈怠安臥。“
「髄海不足すれば、
すなわち脳転じ耳鳴し、
脛痠し敗冒し、目は見る所なく、
倦怠安臥す」
とある。
特徴:
頭のふらつき・目まい感が
慢性的に生じ、
疲労感・健忘・耳鳴・ 目がかすむ・
腰や腿がだるく無力・遺精
インポテンツなどである。
治法:
補腎填精
本証では陰虚火旺のように、
手足のほてり・いらいら・
不眠などの症状は顕著でない。
また、中気不足と異なるところは、
腰がだるく無力・遺精・
インポテンツなどの
腎虚の症状がみられるところである。
・痰濁中阻
暴飲暴食などによって脾胃が損傷し、
脾の運化が障害されて水湿が停滞し、
湿が聚って痰が生じ、
痰湿が中焦を阻滞したために
清陽が昇らず濁陰が下らず
目まいが生じる。
《丹渓心法·頭眩》
“無痰則不作眩“
「痰なくばすなわち眩を作さず」
とある通りである。
特徴:
痰湿が中院に停滞して
気の昇降が失調するので、
腹が張って苦しい 嘔吐・悪心・
食欲不振・体が重だるい・
いつも眠いなどの痰証が
みられることである。
治法:
祛湿化痰
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