摂食嚥下障害
摂食嚥下障害とは、
摂食・嚥下機能がうまく捗らない
ことをいいます。
器質的な面や機能的な面、
精神面の問題がそれぞれあるが、
どれも反射機能の低下による
嚥下障害が厄介な問題であります。
歳を重ねると様々な機能が
衰えて、鈍くなってきますが
嚥下反射が衰えると
誤飲性肺炎など危ない疾患に
陥る恐れがあります。
反射機能を高めるには
どうすればいいか?
反射は脳を介さないので、
脳の問題ではないため
体の機能を高める必要があります。
そもそも体は内臓から作られた
気血を受けて栄養されます。
逆に内臓が衰えると
体をうまく栄養できなくなり、
痛みや痺れ、違和感など
様々な症状が出たり、
機能が落ち込むことがあります。
反射機能も、
内臓の働きによって左右するため
内臓の働きに磨きをかけることができれば、
キビキビ体も動かしやすくなり、
体が動くと感覚も優れてきます。
東洋医学では、
五臓六腑の内臓に働きかける
施術を得意としており、
中から磨きかけることにより
運動機能や反射機能を上げることが
できます。
ここでは、
摂食嚥下障害に関しての
西洋医学と東洋医学の
見解をご紹介致します。
西洋医学の見解
「摂食」は食事を摂ること、
「嚥下」は飲食物を
飲み込むことを指し、
摂食・嚥下は、大きく分け
5つの時期に分けられていて、
無意識に行われる一連の動作を
「摂食・嚥下の5期」
とまとめて呼ぶ。
これら摂食・嚥下機能に
問題が起こることを、
摂食嚥下障害と言う。
①先行期
目や鼻、耳などを使って
食べ物を認識する時期。
熱いのか冷たいのか?
一口大に切るべきかどうか?
食べられる物なのか?
どうか等の判断をする、
口に運ぶ前段階の時期。
②準備期
先行期で認識した食べ物を
口腔内に入れ、咀嚼する時期。
顎、歯、舌などを使って、
咀嚼した食べ物と
唾液を混ぜ合わせた
食塊(しょっかい)を作る。
③口腔期
準備期で作られた食塊を、
舌や頬や唇を使って喉へ送る時期。
鼻へ逆流しない為の機能や、
舌の働きが重要になっくる。
④咽頭期
食塊を、咽頭から食道の入り口へ
と送り込む時期。
のどは気管と食道に分かれており、
食べ物が食道へ送られる際は、
のど仏(喉頭)が持ち上がって
喉頭蓋(こうとうがい)が下がることで
気管が塞がり、スムーズに
食道へと食塊が送られる。
この働きを「嚥下反射」といい、
のど奥が食塊によって
刺激されることで起きる。
⑤食道期
食べ物を胃へと送る時期。
食道入り口の筋肉を収縮させることで
咽頭への逆流を防ぎながら、
蠕動運動と重力によって飲み込む。
原因
摂食・嚥下障害の原因は、
・器質的原因
・機能的原因
・精神心理的原因
の3つに分けられる。
①器質的原因
舌やのどの構造に問題があるために、
上手く飲み込めない。
②機能的原因
舌やのどを動かす神経や筋肉に
障害があるため飲み込めない。
③精神心理的原因
精神的な疾患が
引き起こす場合に起こる。
他にも以下の疾患による
原因も考えられる。
・脳卒中
・加齢による筋力・反射の衰え
・口内炎
・癌
摂食嚥下障害による問題
・誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は、
反射機能が衰えたことにより、
気管に食物が入り込んでしまい、
それに含まれる細菌を除去できず
に起きる肺炎のこと。
食物や唾液が誤って気管に入った場合、
普通はむせて排出するが、
高齢者や睡眠中などの
反応が鈍くなる時には、
誤嚥してしまっても
むせや呼吸苦が起きないことがある。
・窒息
食べ物や飲み物、唾液が
気道を塞ぐことで起こる。
咀嚼や唾液の量が不十分だったり、
飲み込む力が弱まっていたり
することが原因で起きる。
また、喉頭蓋が不十分にしか
下がっていない場合や、飲み下した後、
のどに残ってしまっていた
食べ物が気道に入って
誤嚥が起こることもある。
・低栄養
摂食・嚥下障害により、
一度に食べられる量と、
スムーズに食べられる食事の形が
限定されるため、
低栄養になりやすくなる。
また、加齢などによる
筋力低下が原因であることもある。
摂食・嚥下障害による
低栄養状態を放置してしまうと、
免疫力や体力、筋力の低下を招き、
それに伴って摂食・嚥下障害の悪化を
招くことになり、
身体機能が衰えるため、
QOL(生活の質)の低下にも繋がる。
・脱水
摂食・嚥下障害により、
上手く食べられない・飲めない
状態に陥ると、脱水が引き起こされる。
東洋医学の見解
噎膈(いっかく)とは
嚥下障害のことである。
「噎」 は食物をのみこむ時に
咽がふさがった感じがあること。
「膈」 は胸隔が痞えて食物を
のみ下せないことである。
噎は軽く、膈は重く、
噎は膈の初期症状である。
《千金衍義》
「噎はこれ膈と、もと同一の気、
隔証の始め、噎を由せずして
成ることなし」
といわれる通りである。
厳密には区別できるが、
噎膈として論述する。
・痰気交阻と瘀血
いずれも実証。
内傷七情によって発生することが多く、
情緒の変動にともなって
症状が増悪する。
・痰気交阻
憂思によって脾が損傷をうけて
運化が停滞して湿痰が生じ、
痰と気滞が結びついて
胃を阻害するために
胃気が下降しなくなったり、
食道が阻塞されて発生する。
弁証の要点:
胸の疼痛が軽度で、
舌苔は薄膩・脈は弦を
ともなうことである。
治法:
開欝・潤燥化痰
・瘀血
恚(恨み) 怒によって肝気が欝結し、
気滞から瘀血を生じ、
瘀血が食道を阻塞して発生する。
弁証の要点:
胸の疼痛がつよく、
舌質が青紫色、脈が渋などを
ともなうことである。
治法:
養血活瘀・開結
・陽虚と陰虚
いずれも虚証。
疾病の後期に発生することが多い。
・陽虚
痰阻や瘀血が長期間つづいて
脾腎が虚し脾気が不足して
運化ができず、
腎陽が衰えて温化が困難となり、
飲食物が下りにくくなって発生する。
弁証の要点:
寒がる、顔色が白いつばや
よだれが多いなどの
虚寒の症候をともなうことである。
治法:
温補脾腎・降逆和胃
・陰虚
気欝化火・辛辣燥熱の
薬物の長期間服用などにより
胃陰が消耗したり
酒色の過度によって
精血が損傷して発生する。
胃陰が不足して濡潤できなくなり、
上は食道が乾枯して
飲食物が下らなくなり、
下は大腸が燥結して
兎糞状のコロコロの便となる。
弁証の要点:
皮膚の乾燥・舌質は紅で乾燥、
脈は細数などの
陰虚の症候をともなうことである。
治法:
滋陰養血・潤燥生津
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