浮腫

浮腫(むくみ)は
臨床でよく見受ける症状の一つで、
疲れてくると浮腫んできたり、
夕方〜夜になると浮腫んだり、
朝起きた時から浮腫むこともあり、
その背景には様々な
原因が考えられます。

東洋医学的に考えると、
五臓六腑の連携がうまくいかないと
全身に流す血液や体液がうまく
押し出さなくなるため、
浮腫という現象が発生するぞと
考えられております。
では、どの臓腑が弱って
浮腫という症状が発生するのか?
西洋医学と東洋医学の見解を
こちらではご紹介しております。

 


西洋医学の見解

むくみは、
体の水分と大きく関わる現象で
人の体は約60%が水分でできており
その体内の水分の3分の2は
「細胞内液」という
細胞の中に含まれる水分で、
残りは「細胞外液」といい、
血液に含まれる水分や、
細胞と細胞の間を満たしている水分。

 

これらの水分は、
細胞に栄養を送ったり、
老廃物を除去する役割を担っている。

細胞や血管の中を行き来して
体内の水分のバランスを
保っているのも
特徴のひとつで、
このバランスが崩れ
細胞と細胞の間に水がたまり、
異常に増加したのが「むくみ」。

ちなみにむくみとは俗称で、
医学用語ではこれを
「浮腫(ふしゅ)」という。

浮腫

 

局所性浮腫
静脈やリンパの流れの障害や
局所の炎症で生じる浮腫。
原因によって更に4つに分けられる。

 

1.静脈性浮腫
静脈還流障害による浮腫で、
高齢者のむくみの原因で最も多く、
深部静脈血栓に伴う急性のものと、
慢性静脈不全により発生する
慢性のものとに区別されている。

 

例:
静脈血栓症
上大静脈症候群

 

2.リンパ性浮腫
リンパの流れが滞り、
手足などにむくみが生じる疾患。
リンパ浮腫は
「二次性リンパ浮腫」と
「原発性リンパ浮腫」に大別され、
多くは二次性リンパ浮腫で、
特に日本をはじめとした先進国では
がんの手術や放射線治療に伴い
発症するケースがほとんど。

例:リンパ管閉塞

 

3.炎症性浮腫
感染症やアレルギー、やけどなどの
炎症で生じる浮腫。

例:
関節リウマチ
蜂窩織炎

 

4.血管神経性浮腫
血管は神経支配を受けており
脳梗塞などで神経が傷害されると
浮腫を生じる。

 

浮腫

・全身性浮腫
何らかの疾患によって
浮腫を生じたもので、
原因によっていくつかの
グループに分けられる。

 

1.腎性浮腫
腎臓の機能が何らかの原因で低下して、
余分な水やナトリウムを
うまく排泄できなくて
体にたまってしまったり、
腎臓から蛋白尿が大量に
出てしまったために
血液と体組織での水のバランスを
うまくとることが出来なくなって
生じるむくみ。

腎臓の病気によるむくみは
左右対称的であり、
むくんでいる部分を
指で10秒以上強く押えると、
指の跡がへこんだまま残る。

例:
急性糸球体腎炎
ネフローゼ症候群
慢性腎不全

 

 

2.心性浮腫
心筋梗塞や心筋炎などで
心臓の機能が低下してしまうと
体の中に水やNaがたまるようになる。

例:
うっ血性心不全

 

3.肝性浮腫
慢性肝炎やアルコール性肝炎などで
肝臓の機能が低下してくると、
血液の中に水分を留めておくのに
必要なアルブミンという蛋白質の
合成が低下して濃度が落ちていく。
また肝臓の中に線維が増えて
血流が障害されてくるため
消化管から肝臓に血液を流す
門脈の血圧が上がってくる。

このような状態では
水やNaが体の中にたまるようになり、
むくみや腹水を生じる。

例:
肝硬変

 

4.栄養障害性浮腫
極度の栄養障害がある場合に
むくみが生じることがある。
いくつかの非常に重篤な
消耗性疾患の患者さんで
生じる場合があり
またB1欠乏で脚気になると
生じることがある。

例:
吸収不良症候群
蛋白漏出性胃腸症

 

5.薬剤性浮腫
風邪薬や漢方薬などを服用した後に
むくみが生じることがある。
一般的には薬剤を中止すると
自然に消失。

 

6.内分泌疾患による浮腫
甲状腺機能が低下すると
粘液水腫といわれる浮腫を生じる。
これは他の浮腫と違って
指で押してもすぐに元に戻ってしまい、
指の跡が残らない。
なんとなくはれぼったくて
体重も増え、
寒がりになる。

その他いくつかの内分泌の病気で
むくみを生じるが、
比較的特長的な症状を示すので
採血検査などで診断される。

例:
甲状腺機能低下症

 

7.特発性浮腫
いろいろな検査をやって
正常であるにもかかわらず、
むくみを生じる人がいる。

 

以上のようにむくみの原因には
様々な病気があり、
それによって対応が異なります。

 

 

治療

浮腫の原因となっている
病気の治療が主体となる。

 

・利尿剤
体にたまった過剰な水分を
利尿剤で排出する方法などがあり
期間は症状や病気によって、
短期間のみの場合もあれば
長期間続ける必要がある場合もあり、
さまざま。

 

・弾性包帯や
医療用圧迫ストッキング
圧迫療法は最も簡便かつ
効果が期待できる治療として有用。

 

・運動
リハビリテーション、マッサージ、
ストレッチなどを取り入れて
むくみを生じにくくしたり、
姿勢や生活習慣を改善することも有効。

 

 

浮腫

 

東洋医学の見解

 

全身の浮腫で
圧すると陥凹するものを指す。

《内経》浮腫を「水」「水腫」と称し、
「風水」「石水」「涌水」
などの症候に分けている。

《金匱要略》「水気」と称して
専篇を設け
「風水」「皮水」「正水」「石水」
などに分類している。

 

体表部の浮腫には
「水腫」と「気腫」の別があり
「水腫」は圧すると陥凹して
元にもどりにくいのに対し
「気腫」 は圧痕を残さない。

風寒犯肺と風熱犯肺

いずれも外邪によって
急激に発生する浮腫で
「風水」と呼ばれる。
病位は肺にあり、上焦の水道が
不通になったために発症し、
眼瞼・頭面部の浮腫が顕著である。

 

・風寒犯肺

風寒の邪が侵入して肺気を閉欝し、
肺気の宣発粛降を阻害して
水道の通調が失調したために
水液の輸布と排泄が障害され
水湿が停滞して発生する。

特徴:
浮腫・尿量減少とともに、
悪寒・発熱・頭痛・関節痛などの
風寒の
表証をともない
脈が浮緊で舌苔が薄白を
呈することである。

 

治法:
疏解風寒・宣肺利水

 

 

・風熱犯肺

風熱の邪によって
同様の病理機序が生じ発症する。

特徴:
浮腫とともに
高熱 軽度の悪風・咳嗽・
咽の発赤疼痛尿が濃く少ないなどの
風熱の表証をともない、
脈が浮数で舌苔が薄黄を
呈することである。

 

治法:
辛涼宣肺・清熱利水

 

浮腫

 

水湿困脾と脾陽虚

いずれも脾虚に関連した病証であるが
水湿困脾は「湿」 という
実証に重点がある実中挾虚で
あるのに対し
脾陽虚は 「陽虚」に重点があり
虚証が主体である。

 

 

・水湿困脾

脾気虚の体質で水湿の運化が弱いか
雨にうたれたり水中を歩いたり
湿地で生活したりして
寒湿の邪が侵襲して中焦に停滞し、
湿邪により脾の運化が障害されて
水湿の排泄が悪くなり、
水湿が肌膚に溢れて発症する。

 

特徴:
湿邪の症候がつよく、
脾は四肢を主るので脾の湿困では
浮腫が四肢から発生することが多い。
湿が中焦を阻害して
清陽が昇らないので、
頭がしめつけられるように重い。

湿邪は停滞性で水湿が体内に滞ると
身体が重だるい・
味がないなどが生じる。

湿邪により中焦の昇降が失調し
胸苦しい・悪心などがみられる。

水湿により
膀胱の気化が障害されるので
尿が少なく色がうすい。

 

治法:
温化水湿・通陽利水

 

 

・脾陽虚

浮腫実証の治療が不適当で
遷延して脾陽が障害されるか、
疲労により脾虚が生じて陽虚となり、
陽虚のために水湿の運化ができず
水湿が停滞して発症する。

 

特徴:
浮腫が腰以下に顕著で、
圧すると陥凹して
なかなかもとにもどらず
反復して慢性に経過し、
倦怠感 四肢の冷え・食欲不振・
泥状〜水様便などの
脾陽虚の症候を呈す
ることである。

 

治法:
温運脾陽・化湿利水

 

浮腫

・腎陽虚

脾陽虚と同じく陽虚に属し、
慢性に経過して腰以下の
浮腫が顕著であり
脈象舌象もよく似ており、
両者が同時にみられることが多いのに
腎陽虚の浮腫は、脾陽虚よりも重篤で、
全身の浮腫を呈する。

腰は腎の府であり、
腎は下焦に属すので
腎陽虚では下焦の水道が不通になり、
浮腫がまず腰脚から
発生することが多く
とくに両踝部に顕著である。
また、腰や膝が重だるく無力・
陰のうの冷えなども見られる。

 

治法:
温暖腎陽化気行水

 

 

・気血両虚

脾胃気虚による生化不足、
あるいは慢性病による気血の消耗により
水液代謝が失調して発症する。

 

特徴:
元気がない・息ぎれなどの気虚の症候
顔色が蒼白あるいは萎黄・
口唇が淡白・動悸・頭のふらつきなどの
血虚の症候が明らかであり、
四肢の冷え・泥状便などの
陽虚の症候を呈さないことで、
陽虚ほど浮腫がつよくない。

 

治法:
益気補血

 

 

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