肝炎

西洋医学の見解

 

肝炎とは肝臓の細胞が炎症によって
破壊される病態。

肝炎には以下のように
さまざまな原因がある。

 

 

・ウイルス性肝炎
肝炎を起こすウイルスには
AからEまでの肝炎ウイルス、
EBウイルスやサイトメガロウイルスなど
のウイルスがある。

ウイルス肝炎は
病気の時期に応じ
急性肝炎、慢性肝炎に分けられる。

 

 

急性肝炎

ウイルスがはじめて
肝臓に感染した際に起きる。
大きな炎症を起こすことが多い。
AからEまでの肝炎ウイルス、
EBウイルスや
サイトメガロウイルスなどの
ウイルスが肝臓(おもに肝細胞)
に感染してもすぐに炎症は起きず、
数週間の潜伏期を経て炎症が起こる。

潜伏期の間に感染は広がり、
炎症(肝炎)が起きた際は
たくさんの肝細胞が破壊され
強い症状が起きる。

 

 

慢性肝炎
ウイルスの感染が
持続している際に起きる。

炎症は大きくないことが多いが
持続するため、肝硬変や肝臓がんを
合併することがある。

慢性化する可能性のある急性肝炎は
B型・C型・D型・E型だが、
D型は南西諸島の一部を除けば
日本には存在せず、
E型の慢性化は臓器移植後など
強い免疫抑制療法が
行われる場合に限られる。

 

感染経路

肝炎

 

経口感染

口から入り、
腸を通じて肝臓に運ばれるもの。
A型肝炎ウイルス・E型肝炎ウイルス
などがある。

 

非経口感染
傷ついた皮膚・粘膜や血管から入り、
血流により肝臓に運ばれるもの。
B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス・
D型肝炎ウイルスなどがある。

 

 

・アルコール性肝炎

肝炎

 

アルコール性肝炎とは、
長期(通常は5年以上)にわたる
過剰の飲酒が肝障害の主な
原因と考えられる病態で、
以下の条件を満たすものを指す。

 

症状:
アルコール性肝炎に
特異的な自覚症状や身体所見はない。
他の肝疾患と同様に、
肝機能異常が軽い時期には、
お腹が張る、疲れやすい、
食欲がないなどの自覚症状が
みられることがある。

 

重症アルコール性肝炎では、
飲酒を止めたにも関わらず
肝臓の腫れが続き、腎不全、
消化管出血、肝性脳症など
重篤な合併症を合併することがある。 


肝障害が進展して肝硬変になると、
全身倦怠感、クモ状血管腫、
女性化乳房、手掌紅斑、
皮膚掻痒感、黄疸、腹水、
浮腫、肝性脳症などが認められる。

 

 

・脂肪性肝炎

脂肪肝とは、
肝臓の中に中性脂肪が蓄積して
肝障害をおこす疾患。
脂肪肝の原因は
アルコール性脂肪肝と、
ほとんどアルコールを飲まない人
に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患
に分かれる。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患は
良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、
肝硬変や肝癌に進行する可能性がある
非アルコール性脂肪肝炎に分かれる。

 

肝炎

 

 

・薬剤性肝炎

薬などを服用したときに、
肝臓がダメージを受けて起きる
肝障害を薬物性肝障害と呼ぶ。

 

原因:
もともと人体に有害な毒物や
有害物質のほか、
医療機関で処方された薬、
薬局やドラッグストアなどで
購入できる一般用医薬品、
漢方薬、サプリメントなど
多岐にわたる。

 

症状:
症状は軽いことが多い。
倦怠感、発熱、発疹、
吐き気・嘔吐、かゆみなど。
重症化した場合は、
黄疸や皮下出血、腹痛、肝臓の腫れ、
震え、意識障害など肝不全の症状が
出現することもあり、
時には命に関わる劇症肝炎に
進展することもある。

 

肝炎

 

 

 

東洋医学の見解

 

肝気鬱結

肝気鬱結の症状は
肝炎の初期に現れることが多い。
情緒の失調が肝を傷つけ肝気の
停滞によっておこる。

肝には疏泄機能があり、
正常な状況では
肝気は春の枝木のように
四方に向かってのびやかにいきわたる。気血はよどみなく流動し、
すみずみまで到達する。

しかし、
怒りや不快感などのストレスは、
肝を最も傷つける。

精神的動揺によって
肝の疏泄機能が失調すると、
気血の動きは鈍化し、
流動の状態は乱れ 「気血不和」 となる。

まず気の停滞が現れ、
ついで血の停滞が現れてくる。

 

症状
脇痛
通常は体内各所を流れているが、
ときに気は一カ所に集中し、
ときにパッと発散する。
こうした気の特徴によって、
気が結すれば痛みがおこり、
気結が解消すれば痛みは消える。
痛みは固定痛ではなく、
背中、両脇、胃のあたりなど
あちこちに現れる遊走痛となる。

 

イライラ・怒りやすい
肝の疏泄機能が低下し、
気血を疏泄できず情緒不安定となる。

 

食欲不振ゲップ・下痢

肝気の鬱滞が脾に及び (木克土)
食欲不振、胃腹部が張る、下痢など
肝脾不和の症状が現れる。

肝の疏泄機能が低下した初期段階では、
ゲップ・悪心・嘔吐、
肝胃不和の症状が現れる。

肝炎

 

治療原則:疏肝理気

疏肝は舒肝ともいう。
流通作用は疏肝の方がやや強めである。

 

 

 

瘀血内停

気にはものを動かす力があり、
この力によって
血液を身体各部に輸布しているが、
気の推動力が弱ければ
脈管中の血の流れは渋滞する。

血絡(血管の細い部分)にある
血は滞りやすく、血滞したものは
「絡痺」 となる。

「痺」は阻滞を意味し、
血絡につまった
血滞はやがて
血痰となり、
気血の流動を
さらに悪化させるため、
「不通則痛」となって痛みがおこる。

気滞の段階でおこる症状は
主として痞塞感、腹痛、不快感であり、
気滞が進行した血滞の段階では
顕著な固定痛が生じるようになる。

肝気鬱結が血内停に進行して、
疼痛、舌暗などの症状が
現れるようになったら

理気薬だけでなく、
血分薬も用いなければならない。

 

 

症状
・固定痛・刺痛
瘀血が固定場所に停滞して
流れを止めているために生じる、
刺すような激しい痛みである。

 

・夜になると痛みが強くなる
気は陽で、血は陰である。
陰を代表する夜になると
痛みが強くなるなど、
症状が悪化する症候は、
病因が血分にあると
判断されることが多い。

 

・痞塊
痞は気の停滞によって形成され、
形が定まらず出たり消えたりする。
塊は血が体の深部に停滞して形成される。
肝炎の場合、肝脾が肥大して
内に痞塊ができる。

肝炎

 

治療原則:活血通絡

 

 


肝陰不足

肝気鬱結によって
気の流れが停滞すると、
ついで血の流れが停滞した実証が現れる。

この病がさらに長期化する
(肝硬変の段階)と出血症状が現れ、
陰血は消耗され肝血虚がおこってくる。

肝の主な生理機能は
「疏泄」と「蔵血」 である。
肝は血液を貯蔵管理する臓腑であり、
肝が弱くなれば貯蔵する
血量が少なくなり肝血虚となる。

血は陰に属しているため
肝血虚は肝陰虚、
あるいは肝陰不足といってもよい。

 

肝の虚証には肝気虚や肝陽虚が
おこることは少なく、
肝血虚が一番多い。

血が肝の経脈、血脈を
滋養できないため
肝の機能が低下して
さまざまな病症が現れる。

病気は長期化することが多い。

 

症状
・隠痛
肝血の滋養が不足するために
シクシクする痛みがおこる。
虚証の痛みは治りにくい。

 

・咽乾熱・イライラ
体内の陰血が不足して、
虚火を抑制できないために
おこる陰虚内熱の症状。

 

・めまい・眼精疲労
血が脳部を滋養しないために
眩暈がおこる。
目の栄養不足症状も現れる。

肝炎

治療原則:養陰柔肝

 

 

 

肝胆湿熱

湿熱症状は、
急性肝炎、
慢性肝炎などの
症候と深い関係がある。

慢性肝炎患者の舌のほとんどは
苔が厚くて黄色くなっている。
これは、体内に湿熱が停滞している
ことを示唆している。

湿邪は粘っこく、
体内に長期停滞すると
熱化する傾向がある。

そして、湿と熱は分離しにくく、
とりのぞくことがむつかしい。

清熱するだけでは湿が残り、
利湿するだけでは熱が残る。

湿と熱は必ず一緒に
治療しなければならない。

湿熱の粘稠な性質が
肝気の条達を阻害すると、
肝と表裏関係にある
胆の疏泄機能も失調するため、
胆汁が異常に分泌され
口苦、黄疸といった症状が現れる。

 

症状
・発熱・悪寒
湿熱の邪気が侵入して
体内の正気と闘うために熱がでる。

 

・脇痛
肝胆経の走行する
脇部の気血が停滞しておこる症状。

 

・口苦
胆汁が熱の性質によって
上逆して口に溢れ出る症状。
湿熱を代表する症状である。
胆汁が皮膚・体表に出ると黄疸になる。

 

・胃痞
湿が胃腹部に停滞するため
食欲不振、胃部が重い苦しい、
痞えた感じが現れる。

 

・悪心・嘔吐
湿によって胃の降濁機能が失調し、
胃気が濁物をともなって上逆する。

 

・目赤
熱は上昇の性質をもつため、
上部に熱症状があらわれる。
目の充血とともに
目に黄疸が出ることもある。

肝炎

 

治療原則:清熱利湿

 

 

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