潰瘍性大腸炎

 

胃痛

潰瘍性大腸炎とは、
大腸に潰瘍ができてしまう難病。
西洋医学では、大腸の病なので大腸を
内視鏡で診たり徹底的に大腸を
診ていきますが、
東洋医学では大腸以外の臓腑も
同時に診てゆきます。

そもそも大腸を含め、
体にある臓腑は皆連携し合って
働いているものです。
例えば胃で飲食物を消化し、
小腸で栄養を吸収し、
排泄物は大腸に送られるように
臓腑間にも一連の流れがあります。
胃腸だけに限らず、
他の臓腑も大腸も間接的に
連携しているため、
他臓腑の不調が大腸にくることも
起こり得ます。

大腸だけ徹底して整えても
他臓腑が元気なければ、
また大腸の潰瘍が再燃します。
現象としては大腸の病ですが、
原因は大腸だけに限らないのです。

 

ここでは潰瘍性大腸炎に関する
西洋医学と東洋医学の
見解をご紹介致します。

 

 

 

西洋医学の見解

 

 

潰瘍性大腸炎とは
主として粘膜を侵し、
びらんや潰瘍を形成する
原因不明の大腸の
びまん性非特異性炎症である。

 

 

30歳以下の成人に多いが、
小児や 50歳以上の年齢層にもみられる。

 

 

通常血性下痢と
種々の程度の全身症状を示し、
長期間にわたり、
かつ大腸全体を侵す場合には
悪性化の傾向がある。

 

 

 

潰瘍性大腸炎

 

 

 

多くの患者は
再燃と寛解を繰り返すことから
長期間の医学管理が必要となる。

 

 

 

原因

いまだ病因は不明。
現在では遺伝的因子と
環境因子が複雑に絡み合って、
腸管局所で何らかの
過剰な免疫応答を引き起こし、
発症と炎症の持続に
関与していると考えられている。

 

 

 

症状

主に、血便、粘血便、下痢、
あるいは血性下痢を呈する。

 

 

病変範囲と重症度によって左右され
軽症例では血便を伴わないが、
重症化すれば、
水様性下痢と出血が混じり、
滲出液と粘液に
血液が混じった状態となる。

 

 

潰瘍性大腸炎

 

 

 

他の症状としては
腹痛、発熱、食欲不振、
体重減少、貧血などが
加わることも多い。

 

 

さらに
関節炎、虹彩 炎、膵炎、
皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)
などの腸管外合併症を
伴うことも少なくない。

 

 

 

治療

原則として、重症例や、
ある程度の全身障害を伴う
中等症例に対して
重症例では入院の上、脱水、
電解質異常(特に低カリウム血症)、
貧血、栄養障害などへの
対策が必要である。

 

 

 

激症例は
極めて予後不良であるので、
内科と外科の協力のもとに
強力な治療を行い、
短期間の間に手術の要、
不要を決定する。

 

 


軽症および中等症例では

5-ASA 製薬(メサラジン)を、
無効例や重症例で
副腎皮質ステロイド薬にて
寛解導入を行う。

 

 

寛解維持には5-ASA 製薬(メサラジン)、
また、ステロイド薬を
投与した場合には
免疫調節薬の使用も考慮する。

 

 

免疫調節薬は
ステロイド依存例で使用され、
ステロイド薬無効例では
シクロスポリン、タクロリムス、
インフリキシマブ(レミケード)、
アダリムマブ(ヒュミラ)
あるいは血球成分除去療法が行われる。

 

 

 

 

内科的治療に
反応せず改善がみられない、
あるいは症状の増悪が
みられる場合には
手術適応を検討する。

 

 

近年、手術術式の進歩により
肛門機能を温存できるようになり、
術後のQOL(生活の質)も
向上している。

 

 

 

予後

一般に発症時の重症度が重いほど、
罹患範囲は広いほど
手術率、死亡率が高くなるが、
近年の報告では
生存率は一般と比べて
差がないとする報告もみられる。

 

 


手術理由は

発症5年以内では激症例や
重症例の内 科治療無効例が多く、
5年以降は慢性持続型
などの難治例が対象となりやすい。

 

 

 

 

生理痛

 

 

東洋医学の見解

 

 

 

排便前に腹痛があって
便意急迫するものを「裏急」
排便時に切迫し重墜して出にくい
ものを「後重」といい、
両者が同時に生じるものを
「裏急後重」と称する。

 

「痢疾」の一症状である。

 

 

また、大便下血とは血便のことで、
出血だけのことや
先便後血・先血後便・
便血雑下などがある。

 

 

《霊枢・百病始生篇》
「後血」

 

《素問、陰陽別論》
「便血」

 

《傷寒論》
「園血」

 

《金置要略》
「下血」
(「遠血」「近血」に分けている。)

 

《医学入門》
「血箭」

 

《寿世保元》
「腸風」

 

《医学入門》《血証論》
「臓毒」

 

 


大瘕世は裏急後重し、

しばしば圊に至りて便する能わず、
茎中痛む」とあり、
《傷寒論》《金貫要略》
では「下利後重」 と述べている。

 

 

痢疾では湿熱と気滞が
同時に生じ相互に影響しあう。
湿熱の邪が腸管に停滞して
気滞が生じると裏急·腹痛が、
熱邪が大腸に入り気滞をひきおこすと
便を排出しようとしても出ず
肛門の重墜感が生じる。

 

 

《傷寒来蘇集、巻四》
「暴注下迫は熱に属し、
熱利下重すればすなわち
湿熱の磁気は広腸を驚遇す、
ゆえに聴門重滞して出で難きなり」
とあり、
気滞のために
水湿が運化されずに停滞し、
鬱して化熱して大腸を障害するので
腹痛・後重が生じる。

 

 

以上のように
湿熱と気滞は同時に存在するが、
いずれかに偏重するのが一般的である。

 

 

 

湿熱

腹が痛んで便をしたくなって後重し、

肛門均熱感・上腹部が痞えて苦しい
舌苔は膩などの症候が主体になる。

 

 

 

気滞

裏急・腹が痛んで
脇肋に放散する・
すっきり排便できないなど

の症候が主体になる。

 

 

 

(2) 気虚と傷陰

 

いずれも虚証。
長期間下痢が続いた場合に生じ

 

「気は血の帥たり、血は気の母たり」
といわれるで通り
気虚は血虚を生じ
血虚も気虚を生じるので

両者は相互に関連しているが、
症候と治法は明らかにて異なる。

 

気虚

慢性の下痢によって
脾の運化が衰弱して
気血の生化が障害され
気虚下陥となったために発生する。

 

特徴:
肛門部の下墜感があり、
甚しければ脱となり、
粘血便(白多赤少)・少食・
疲労感・体がだるく立っていられない
などの症候がみられることである。

 

《張代医通・痢疾》
「裏急して頻りに
汚衣をあらわすは気脱なり」

 

 

数陰

慢性な下痢が
陰液・営血が損傷して発生する。

 

特徴:
粘稠なゼリー状の便・
努責するが出ない・焦操感・口乾・
舌質は紅・脈は細数
などの症候を呈することである。
「虚坐努責」 に相当する。

 

 

潰瘍性大腸炎


便血を伴う便の鑑別分析

 


(3)大腸風熱と大腸湿熱

 

いずれも熱証・実証。

 

 

大腸風熱

風邪が陽明経脈に侵入し化熱したり、
肝経の風熱が腸胃に横逆し、
風熱の邪が陰絡を傷つけるために生じる。

 


《中蔵経》

「大腸の熱極まればすなわち便血し
また風は大腸に中ればすなわち下血す」
とあるのに相当し
後世にいう「腸風」である。

 

特徴:
口渇して冷たいものを飲む・
歯銀の腫服・ロが苦い口臭・
便秘・舌苔は黄・脈は数などの
熱証を呈することである。

 

 

風熱であるから、
急性に発症して経過が短かく、
先血後便で四方に
とびちるような鮮血が出て、
甚しければ
純血液が出るのも特徴である。

 

 

・肝経風熱

胸脇部が張るいらいら・
怒りっぽい脈は弦数などの
症候を呈する。

 

 

 

・陽明熱盛

鮮血便・口乾口唇の乾燥・
舌質は紅・舌苔は黄・
脈は数で有力などを呈する。

 

 

 

 

大腸湿熱

飲酒や辛錬なもの・
濃厚なもの・甘いものを過食して
湿が生じたり、
湿地に長く住んだり、
露や霧に濡れたりして
湿邪が侵入して停滞し、
大腸に下注して化熱し、
陰絡を傷均したために生じる。

 

 

特徴:
「臓毒」に属し毒邪が長期間
鬱積してあらわれるものであるから、
紫黒色で黒豆汁のような血便で、
甚しければ血塊となり、
湿熱の阻滞によって
上腹部の癌満・悪心・

幅吐・少腹・腹満・便秘・
舌苔は膩・脈は滑を呈し、
肛門が硬く腫れて痛むなどの症候が
みられることである。

 

 

 

(2) 肝腎陰虚と脾腎陽虚


いずれも虚証。

過労により頻発するのが特徴。

 

 

・肝腎陰虚

慢性疾患による営陰の消耗・
飲酒や性生活の過度による
腎陰の損傷・

肝鬱化火により陰血の損耗などで
肝腎の陰血が不足して
陰虚火旺となり、
熱が陰絡を損傷して生じる。

 

 

特徴:
先便後血して深紅の血液が点滴し
出血量は多くなく、
排便後に疲れて立っていられず
口や咽の乾燥・五心煩熱・不眠・
多夢など陰虚火旺の症候を
ともなうことである。

 

 

 

・脾腎陽虚

陽虚の体質・過労・大病などで
脾腎の陽気が消耗し、
脾気が虚して血の統摂ができず
腎気が虚して封蔵できないために
陰絡から血が溢れ発生する。

 

 

特徴:
先便後血の「遠血」で、
うすく暗談あるいは黒色粘稠で
柏油状を呈すことである。

 

 

また下血が長期間つづくと
陰液の消耗が陽気に及び、
陽虚では陰を統摂できなくなるので、
顔色が淡でつやがない・息ぎれ・
ものをいうのがおっくう・
四肢の冷え・寒冷を嫌う。
腹部の鈍痛・尿がうすい軟便・
舌質は淡・脈は微などの症候をともなう。

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