【東洋医学用語】鼻衄・衄血

鼻衄・衄血

鼻血のこと。
臨床的には表証と裏証とある。

・表証
風寒に侵された後
鼻出血で寛解することもある。
風熱でも鼻出血することはあるが、
寒証・裏証ともに少量の出血である。

・裏証
飲酒や辛辣の物を過食して出る
鼻出血は胃火によるもの。
怒りや興奮、肝気の昂りからは
肝火によるもの。
運動によって出るものは
腎虚・脾虚によるもの。

衄血による多くは火によるもので
陰虚によるものが多く感じます。

また、子どもに鼻出血が多いのは
子どもはまだ発育途中のため、
陰虚というか陰気が十分に
備わっていないので、
”陽気の塊”の子どもが
興奮したりお菓子ばかり食べたりすると
内熱から衄血が出てしまう
といった事をしばしば見受けます。

 

衄血

『其云鼻大衄者、
是因鼻衄而口耳鼻皆出血、
故云鼻大衄也。』
(隋・巢元方
《諸病源候論・卷二十九・鼻病諸候・鼻大衄候》)

訳:その鼻大衄とは、
鼻血が原因で口、耳、鼻からすべて出血することを指し、
したがって鼻大衄と言うのである。

(隋・巢元方『諸病源候論・巻二十九・ 鼻病諸候・鼻大衄候』)

 
『衄血有格陽證者、
以陰虧於下而陽浮於上、
但察其六脈細微、全無熱證、
或脈見浮虛豁大、
上熱下寒而血衄不止、皆其證也。』
明・張介賓《景岳全書・卷之三十・雑証謨・血證》)
訳:鼻血は、陽証のある衄血であり、
下の陰が損なわれ上部に陽が浮しているが、
六脈を察すると細微で、全く熱証ない。
あるいは脈が浮虚大で、
上は熱く下は寒く、血が止まらない、
これその証である。
(明・張介賓『景岳全書・巻之三十・雑証謨・血證』)
 
『是以上溢清道、
從鼻而出力衄。
又血從汗孔出者、謂之肌衄:
從舌出者、謂之舌衄、
心與肝也:從委中穴出者、
謂之胭血、腎與膀胱也。
(明・李梴《醫學入門・卷五・血》)
訳:鼻から出る鼻血で
清道に溢れ出るものを衄という。
また、汗孔から出る血は肌衄といい、
舌から出る血は舌衄と呼ばれ、
心や肝に関係する。
委中穴から出る血は
腎と膀胱に関係する胭血と呼ばれる。
(明・李梴『医学入門・巻五・血』)
 
『血從鼻孔而出者、衄也。
鼻為清道、肺之開竅、陽明主司、
以手太陰肺與手陽明大腸、
相為表裡者也。
陽明有熱、肺受火制、陽明之脈入目絡鼻、
交頻中、旁納太陽之脈、
故仲景《傷寒》條、以太陽有邪、侵入陽明則衄血。
又以足太陽膀胱之脈與足少陰腎相表里、
故《金匱》內傷條、以肝腎有火、
上衝太陽巔頂、傳入陽明亦為衄血。』
(明・秦景明《症因脈治・巻二・衄血論》)
訳:
鼻から血が出るのは、鼻血である。
鼻は清浄の道であり、肺の開口部であり
明が主宰するもので、
手太
肺と手陽明大腸が表裏の関係にある
陽明に熱が
あれば、肺は火によって制約され、
陽明の脈は目を通り鼻に絡み、頻繁交わり
陽の脈を旁に受け入れる。
した
がって、仲景の『傷寒論』では、
太陽に
邪気が侵入し陽明に影響を与えると
鼻血が
出るとされている
また、足太陽の膀胱の脈
と足少陰の腎
表裏の関係にある
ため、
『金匱要略』の内傷の条
では、
肝腎に火があり、上に衝いて太陽の頂に達
し、
陽明に伝わり鼻血を引き起
こすとある。
 

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