“胸”は胸中を指す。
結胸とは胸中に結んだ邪気のために
心窩部が痛み、
硬満がある病証のことをいう。
結胸有輕重,立方有大小。
從心下至小腹,按之石硬而痛不可近者,
為大結胸。正在心下,未及脅腹,按之則痛
未會石硬者,為小結胸。
大結胸,是水結在胸腹,故脈沈緊。
小結胸,是痰結於心下,故脈浮滑。
水結宜下……痰結宜消。
(清·徐靈胎《傷寒約編·卷一·大陷胸湯證》)
結胸には軽重があり、処方には大小がある。
心下から 小腹に至るまで、
押すと石のように硬く、
大結胸である。
ちょうど心下にあり、
脇腹には及ばず、押すと痛むが
まだ石のように硬くないものは、
小結胸である。
大結胸は、水が胸腹に結滞しているため、
脈は沈緊である。
小結胸は、痰が心下に結滞しているため、
脈は浮滑である。
痰結は消すべきである。
(清・徐霊胎『傷寒約編・巻一・大陥胸湯証』)
結胸之證有三:
不按而痛者名大結胸;
按之而痛者名小結胸;
心下怔忡,頭汗出者名水結胸也。
(金·劉完素《傷寒標本心法類·結胸》)
結胸の証には三つある。
押さなくても痛むものを大結胸といい、
押すと痛むものを小結胸といい、
心下怔忡、頭に汗が出るものを水結胸という。
(金・劉完素『傷寒標本心法類・結胸』)
結胸者,陽邪結於陽也;
髒結者,陰邪結於陰也。
(清·喻嘉言《尚論篇·太陽經中篇》)
結胸とは、陽邪が陽に結滞することであり、
臓結とは、 陰邪が陰に結滞することである。
(清・喩嘉言『尚論篇・太陽経中篇』)
結胸者,熱毒結於胸中也。
其證便閉不通,舌乾口燥,
胸腹滿硬,繞臍疼痛,或兼譫語,
或兼狂亂,須分大小治之。
若從心至小腹痛,手不可近者,為大結胸。
若硬滿止在心下,按之始痛者,為小結胸。
(清·孫德潤《醫學匯海•卷三·傷寒證·結胸證》
訳:
結胸とは、熱毒が胸中に結滞することである。
その証は便秘不通、舌が乾き口が渇き、
胸腹が張って硬く、
あるいは譫語を伴い、あるいは狂乱を伴う。
もし心から小腹まで痛み、
大結胸である。
もし硬満が心下にとどまり、
押して初めて痛むものは、小結胸である。
(清・孫徳潤『医学匯海・巻三・傷寒証・結胸証』)
有痞滿認作結胸者。
痞為虛邪,必居胸脅,不在中也,雖滿而不痛。
結胸為實邪,正在胸中,痛不可近者,
為大結胸;若按之方痛者,為小結胸。
(清·張璐《傷寒緒論·總論·審證》)
痞満を結胸と誤認する者もいる。
痞は虚邪であり、必ず胸脇にあり、中にはない。
結胸は実邪であり、まさに胸中にあり、
もし押して初めて痛むものは、小結胸である。
(清・張璐『傷寒緒論・総論・審証』)
結胸者,項亦強,如柔痙狀,
下之則和,宜大陷胸丸。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
結胸の者は、項もまた強ばり、
柔痙の状のごとく、これを下せば和らぐ。
大陥胸丸を宜しく用いるべし。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
結胸證,其脈浮大者,
不可下,下之則死。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
結胸証にして、その脈浮大なる者は、
下すべからず、これを下せばすなわち死す。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
結胸證悉具,煩躁者亦死。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
結胸証悉く具わり、煩躁する者もまた死す。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
問曰:病有結胸,有藏結,其狀何如?
答曰:按之痛,寸脈浮,關脈沈,
名日結胸也。何謂藏結?
答曰:如結胸狀,飲食如故,
時時下利,寸脈浮,關脈小細沈緊,
名曰藏結,舌上白胎滑者,難治。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
問うて曰く、病に結胸あり、蔵結あり、
その状いかん。答えて曰く、按じて痛む、
寸脈浮、関脈沈む、これを結胸と名づく。
何ぞ蔵結というや。
答えて曰く、結胸の状のごとく、
飲食故のごとく、時々下利し、
寸脈浮、関脈小細沈緊なる者、
これを蔵結と名づく、
舌上白胎滑なる者は、治し難し。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
太陽少陽並病,而反下之,
成結胸,心下硬,下利不止,
水漿不下,其人心煩。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
太陽少陽並病し、反ってこれを下し、
結胸を成し、心下硬く、下利止まず、
水漿下らず、その人、心煩す。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
傷寒五六日,嘔而發熱者,
柴胡湯證具,而以他藥下之,
柴胡證仍在者,復與柴胡湯。
此雖已下之,不為逆,必蒸蒸而振,
卻發熱汗出而解。
若心下滿而硬痛者,此為結胸也,
大陷胸湯主之;
但滿而不痛者,此為痞,
柴胡不中與之,宜半下瀉心湯。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
傷寒五六日、嘔して発熱する者、
柴胡湯証具わるも、他薬を以てこれを下し、
柴胡証なお在る者は、復た柴胡湯を与える。
これすでにこれを下すも、逆となさず、
必ず蒸蒸として振え、却って発熱汗出でて解す。
もし心下満ちて硬痛する者は、
これを結胸となす、大陥胸湯を主るべし。
ただ満ちて痛まざる者は、
これを痞となす、
柴胡はこれに与えるに中らず、
半夏瀉心湯を宜しく用いるべし。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
寒實結胸,無熱證者,
與三物小陷胸湯,白散亦可服。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
寒実結胸し、熱証なき者は、
三物小陥胸湯を与えるべし、
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
太陽與少陽並病,頭項強痛,或眩冒,
時如結胸,心下痞硬者,當刺大椎
第一間、肺俞、肝俞,慎不可發汗,
發汗則譫語,脈弦,五日譫語不止,當刺期門。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
太陽病と少陽病が同時に発症し、
頭と首がこわばり痛み、あるいはめまいがし、
時に結胸のように感じられ、
心窩部が痞え硬い者は、
大椎の第一間、肺兪、肝兪に鍼を刺すべきである。
発汗させてはならず、発汗させると譫語を発し、
脈は弦となる。五日間譫語が止まない場合は、
期門に鍼を刺すべきである。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
傷寒六七日,結胸熱實,脈沈而
緊,心下痛,按之石硬者,大陷胸湯主之。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
傷寒六、七日、結胸熱実、脈沈にして緊、
心窩部が痛み、按ずれば石のように硬い者は、
大陥胸湯を主とする。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
傷寒十餘日,熱結在里,復往來寒
熱者,與大柴胡湯;但結構,無大熱者,
此為水結在胸脅也,但頭微汗出者,
大陷胸湯主之。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
傷寒十余日、熱が裏に結び、
再び寒熱が往来する者は、大柴胡湯を与える。
ただし、結胸のみで大熱がない者は、
これは水が胸脇に結んだものであり、
頭部にわずかに汗が出る者は、
大陥胸湯を主とする。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
太陽病,重發汗而復下之,不大便
五六日,舌上燥而渴,日晡所小有潮
熱,從心下至少腹硬滿而痛不可近者,
大陷胸湯主之。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
太陽病で、重ねて発汗させ、
さらに下剤を用いた後、五、六日間大便がなく、
舌が乾燥して喉が渇き、日暮れ時にわずかに潮熱があり、
心窩部から小腹にかけて硬満して
触れることができないほど痛む者は、
大陥胸湯を主とする。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
小結胸病,正在心下,按之則痛,
脈浮滑者,小陷胸湯主之。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》)
訳:
小結胸病で、心窩部にあり、按ずれば痛み、
脈が浮滑である者は、小陥胸湯を主とする。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
太陽病二三日,不能臥,但欲起,
心下必結,脈微弱者,此本有寒分也。
反下之,若利止,必作結胸;未止者,
四日復下之,此作協熱利也。
(漢·張機《傷寒論·辨太陽病脈證並治》
訳:
太陽病二、三日、臥すことができず、
ただ起き上がりたがり、心窩部が必ず結び、
脈が微弱である者は、これは元々寒邪が
分部にあったものである。
これに反して下剤を用い、
もし下痢が止まれば必ず結胸となる。
止まらない者は、四日目に再び下剤を用いると、
これは協熱利となる。
(漢・張機『傷寒論・弁太陽病脈証並治』)
大抵結構與痞,皆應下。
然表未解者,不可攻也。
(宋·朱肱《類證書・卷十》)
訳:
おおよそ結胸と痞は、
いずれも下剤を用いるべきである。
しかし、表証が未だ解けていない者は、
攻めてはならない。
(宋・朱肱『類証書・巻十』)
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