【東洋医学用語】帯下

帯下

 

帯下とは、
膣から流出する粘稠性の物質。
オリモノ・こしけと呼ばれ
正常なものは無色透明無臭で少量。
この場合は病ではない。


帶下之證,因濕熱流注於帶脈而
下濁液,故曰帶下。
(清·孟葑《仁壽鏡·卷一下·帶下》)

訳:
帯下の証は、湿熱が帯脈に流れ込み、
濁液が下りるため、帯下という。
(清・孟葑『仁寿鏡・巻一下・帯下』)


女子病,首須問帶。蓋帶者,女子
生而即有,故越人作女科,稱帶下醫也。
(清·王士雄《潛齋醫學叢書•重慶堂隨筆·卷下》)

訳:
女性の病気では、まず帯を問うべきである。
帯とは、女性が生まれてすぐに
持っているものであるから、
越人は女科を作り、帯下医と称した。
(清・王士雄『潜斎医学叢書・重慶堂随筆・巻下』)


凡婦人有白帶,是第一等病,令人
不產育,宜速治之。昔扁鵲過邯鄲,聞
貴婦人多有此病,所以專為帶下醫也。
(宋·许叔微《普济本事方·卷第十·妇人》)

訳:
婦人に白帯があるのは、
第一級の病であり、出産を妨げるので、
速やかに治療すべきである。
昔、扁鵲が邯鄲を通りかかったとき、
貴婦人にこの病が多いと聞き、
そこで帯下医を専門とした。
(宋・許叔微『普済本事方・巻第十・婦人』)


凡妇人赤白带证,多因湿痰下流
而致,与男子遗精同论。(清·孙德润
《医学汇海·卷二十一·带下》)

訳:
婦人の赤白帯の証は、
多くは湿痰が下流することによって起こり、
男子の遺精と同じように論じる。
(清・孫徳潤『医学匯海・巻二十一・帯下』)


女子生而带下,不足为病,即其所
谓“津津常润”者,本属无多,亦不秽
恶,是以世俗有“十女九带”之谚,诚不
必药,且闺中隐曲,原不告人,亦少有
以此求治者。
(张山雷《沈氏女科辑要笺正·卷上·带下》)

訳:
女性が生まれてすぐに帯下があるのは、
病気とは言えず、いわゆる
「津津常潤」というもので、
もともと多くなく、汚いものでもない。
そのため世間には
「十女九帯」という諺があり、薬は必要ない。
また、閨中の隠し事は、もともと人に告げず、
これで治療を求める者も少ない。
(張山雷『沈氏女科輯要箋正・巻上・帯下』)


女子带下与男子精滑大同小异。
(明·李中梓《病机沙篆·赤白带》)

訳:
女性の帯下と男性の精滑は、大同小異である。
(明・李中梓『病機沙篆・赤白帯』)


带下,女子生而即有,津津常润,
本非病也。故扁鹊自称带下医,即今所
谓女科是矣。
(张山雷《沈氏女科辑要笺正·卷上,带下》)

訳:
帯下は、女性が生まれてすぐに持っており、
津津として常に潤っているもので、
もともと病気ではない。
故に扁鵲は自らを帯下医と称し、
それが今の女科である。
(張山雷『沈氏女科輯要箋正・巻上、帯下』)


带下为冲任之证。
而名谓带者,盖以奇经带脉,原主约束诸脉,
冲任有滑脱之疾,责在带脉不能约束,
故名为带也。
(张锡纯《医学衷中参西录·医方》)

訳:
帯下は衝任の証である。
帯と名付けられるのは、奇経の帯脈が
もともと諸脈を束ねる主であり、
衝任に滑脱の病がある場合、
帯脈が束ねることができない責任があるため、
帯と名付けられたのである。
(張錫純『医学衷中参西録・医方』)


南方地土湿,人常弱,故带
之症,十人有九。
(清·程国彭《医学心悟·卷五·带下》)

訳:
南方の土地は湿潤で、
人は常に虚弱であるため、
帯の症は十人中九人にみられる。
(清・程国彭『医学心悟・巻五・帯下』)


带下之证,起于风气寒热所伤,入
于胞宫,从带脉而下,故名为带。
或因六淫七情,或因醉饱房劳,
或因膏粱厚味,或服燥剂所致;
脾胃亏损,阳气下陷,或湿痰下注,蕴积而成。
(清·张璐《张氏医通·卷十·妇人门·带下》)

訳:
帯下の証は、風気寒熱に傷つけられ、
胞宮に入り、帯脈から下りるため、
帯と名付けられる。
あるいは六淫七情、あるいは酔飽房労、
あるいは膏粱厚味、
あるいは燥剤の服用によって起こり、
脾胃の虧損、陽気の下陥、
あるいは湿痰の下注が蓄積して形成される。
(清・張璐『張氏医通・巻十・婦人門・帯下』)


带下之因有四:一因气虚,脾精不
能上升而下陷也;一因胃湿热及痰,
流注于带脉,溢于膀胱,故下浊液也;
一因伤于五脏,故下五色之带也;
一因风寒入于胞门,或中经脉,
流传脏腑而下也。

……因血少复亡其阳,故白滑之物下流。
亦有湿痰流注下焦,或肝肾阴淫之湿,
或缘惊恐而木乘土位,浊液下
流,或色欲太甚,肾经亏损之故。
或产多之妇,伤血液,皆能成带下之疾。
(清·沈金鳌《妇科玉尺·卷五·带下》)

訳:
帯下の原因は四つある。
一つは気虚により、
脾精が上昇できずに下陥すること。
一つは胃の湿熱および痰が、
帯脈に流れ込み、膀胱に溢れて
濁液が下りること。
一つは五臓を傷つけ、
五色の帯が下りること。
一つは風寒が胞門に入り、
あるいは経脈に中り、
臓腑に流伝して下りること。

……血が少なく、さらに陽を失うため、
白く滑らかなものが下流する。
また、湿痰が下焦に流れ込んだり、
肝腎の陰淫の湿、あるいは
驚恐によって木が土位を乗じ、
濁液が下流したり、
あるいは色欲が過度で
腎経が虧損したためである。
あるいは多産婦が血液を傷つけ、
いずれも帯下の病となる。
(清・沈金鳌『婦科玉尺・巻五・帯下』)


或因六淫七情,或因醉饱房劳,或
因膏粱厚味,或服燥剂所致,脾胃亏损,
阳气下陷;或湿痰下注,蕴积而成,
故言带也。
(明·薛己《女科撮要·卷上·带下》)

訳:
あるいは六淫七情、
あるいは酔飽房労、
あるいは膏粱厚味、
あるいは燥剤の服用によって起こり、
脾胃の虧損、陽気の下陥、
あるいは湿痰の下注が蓄積して
形成されるため、帯という。
(明・薛己『女科撮要・巻上・帯下』)


妇人赤白带下者,皆因月经不调,
房色过度,或产后血虚,
胃中湿痰流下,渗入膀胱而带也。
(明· 龚廷贤《万病回春·卷之六·妇人科·带下》)

訳:
婦人の赤白帯下は、
いずれも月経不順、房事過度、
あるいは産後の血虚、
胃中の湿痰が流れ下り、
膀胱に滲み込んで帯となる。
(明・龔廷賢『万病回春・巻之六・婦人科・帯下』)


妇人赤白带下之症,多是怒气伤肝,
夫肝属木,脾属土,肝邪乘脾,
木气克土,则脾受伤而有湿,湿而生热,
热则流通,所以滑浊之物渗入膀胱,
从小便而出也。
(明·方广《丹溪心法附余·
卷之二十。妇人门·带下》)

訳:
婦人の赤白帯下の症は、
多くは怒気によって肝を傷つけ、
肝は木に属し、脾は土に属し、
肝の邪が脾を乗じ、
木の気が土を剋するため、
脾が傷つき湿が生じ、湿が熱を生じ、
熱が流通するため、
滑濁のものが膀胱に滲み込み、
小便から排出されるのである。
(明・方広『丹渓心法附余・巻之二十。婦人門・帯下』)


夫妇人白带下者,是劳伤血气,
损动冲任之脉,冲任之脉皆起于胞内,
为经脉之海,若冲任气虚,
不能约制经血,则血与秽液相兼成带下。
(宋·王怀隐等《太平圣惠方·卷第七十三·
治妇人白带下诸方》)

訳:
婦人の白帯下は、
労傷によって血気を損ない、
衝任の脈を動かすためである。
衝任の脈はすべて胞内から起こり、
経脈の海である。
もし衝任の気が虚し、
経血を約制できないと、
血と穢液が混じり合って帯下となる。
(宋・王懐隠等『太平聖恵方・巻第七十三・治婦人白帯下諸方』)


带下者,由劳倦过度,损动经血,
致令体虚受风冷,风冷入于胞络,
搏其血之所成也。
(隋·巢元方《诸病源候论·卷三十七·
妇人杂病诸候·带下候》)

訳:
帯下は、過度の労倦により経血を損ない、
体虚となり風冷を受け、風冷が胞絡に入り、
その血と搏って形成されるものである。
(隋・巣元方『諸病源候論・巻三十七・婦人雑病諸候・帯下候』)


今人所患,惟赤白二带而已。
推其所自,劳伤过度,冲任虚损,风冷据于
胞络,此病所由生也。
(宋·严用和《重订严氏济生方・妇人门·带下论治》)

訳:
今人が患うのは、
ただ赤白の二帯のみである。
その原因を推測すると、
過度の労傷、衝任の虚損、
風冷が胞絡に据わることによって、
この病が生じるのである。
(宋・厳用和『重訂厳氏済生方・婦人門・帯下論治』)


带下者,
由湿痰流注于带脉而下浊液,故曰带下。
(明·龚廷贤《医学入门万病衡要·卷之六·带下》)

訳:
帯下は、湿痰が帯脈に流れ込み、
濁液が下りるため、帯下という。
(明・龔廷賢『医学入門万病衡要・巻之六・帯下』)


因湿热结于带脉,津液泛滥,
入小肠为赤,入大肠为白。
(元·朱震亨《丹溪手镜·卷之下。带下》)

訳:
湿熱が帯脈に結びつき、津液が氾濫し、
小腸に入れば赤となり、大腸に入れば白となる。
(元・朱震亨『丹渓手鏡・巻之下。帯下』)


带、漏,俱是胃中痰积流下,渗入
膀胱。宜升。无人知此。
肥人多是湿痰。
(元·朱震亨《金匮钩玄·卷之三。
妇人科。带下赤白》)

訳:
帯、漏は、ともに胃中の痰積が流れ下り、
膀胱に滲み込むものである。
昇らせるべきである。
これを知る者はいない。
肥満の人は多くが湿痰である。
(元・朱震亨『金匱鉤玄・巻之三。婦人科。帯下赤白』)


带漏虽是水病,而亦有淤血者,
以血阻气滞,因生带浊。
若脾土失其冲和,不能制水,
带脉受伤,注于胞中,因发带症。
(清·唐宗海《血证论·卷四·崩带》)

訳:
帯漏は水病であるが、
瘀血がある場合もあり、
血が気を阻滞するため、
帯濁が生じる。
もし脾土がその衝和を失い、
水を制することができず、
帯脈が傷つき、胞中に注ぎ込むと、
帯症が発症する。
(清・唐宗海『血証論・巻四・崩帯』)


赤白带下,皆因七情内伤,
或下元虚冷,感非一端。
(明·戴元礼《秘传证治
要诀·卷十二·妇人门·赤白带下》)

訳:
赤白帯下は、いずれも七情の内傷、
あるいは下元の虚冷によるもので、
原因は一つではない。
(明・戴元礼『秘伝証治要訣・巻十二・婦人門・赤白帯下』)


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