【東洋医学用語】崩漏

崩漏

経崩 または崩中漏下。
非月経期に大量の性器出血がみられたり、
出血が持続するものを指す。
不正性器出血のこと。


婦人崩漏,最為大病。
(清·陳夢雷等編
《圖書集成醫部全錄·卷三百九十五。
婦人崩漏門·徐春甫古今醫統·崩漏證治》)

訳:
婦人の崩漏は、最も重篤な病である。
(清・陳夢雷等編
『図書集成医部全録・巻三百九十五。
婦人崩漏門・徐春甫古今医統・崩漏証治』)


東垣論崩漏不止有三症:一症因
脾胃虛損,下陷於腎,與相合,濕熱下迫,
遂漏不止;一症因先富後貧,心事不足,
則鬱悶損牌,飲食少進,血液不生,
經自漏矣;一症因悲哀太甚,先損於肺,
而心胞絡之脈無所營,亦絕於內,
故火動而數溲血也。
(明·龔廷賢
《醫學入門萬病衡要·卷之六·崩漏》)

訳:
東垣は崩漏が止まらない症候を三つ論じている。
一つは脾胃の虚損により、腎に陥り、
相火と合わさり、湿熱が下迫して、
漏れが止まらない症候。
一つは、かつて裕福であった者が貧しくなり、
心労が絶えず、鬱悶が脾を損ない、飲食が進まず、
血液が生成されず、経血が自然に漏れる症候。
一つは、悲哀が甚だしく、まず肺を損ない、
心包絡の脈が営養されず、内も絶え、
故に火が動いて頻繁に血尿が出る症候である。
(明・龔廷賢
『医学入門万病衡要・巻之六・崩漏』)


大凡女子,自天癸既通而後,
氣血調和,則經水如期,不先不後,
自無崩漏之患。
若勞動過極,以致臟腑虧傷,
而衝任二脈虛,不能約束其經血,
使之如期而下,故或積久,或不須積久,
忽然暴下,若山之崩,如器之漏,
故曰崩漏。究其原,則有六大端:一由火熱,
二由虛寒,三由勞傷,四由氣陷,五由
血淤,六由虛弱。
(清·沈金鰲《婦科玉尺·卷五·崩漏》)

訳:
およそ女子は、天癸が通じて以後、
気血が調和していれば、
月経は定期的で、早くも遅くもなく、
崩漏の患いはない。
もし過度の労働により、臓腑が損傷し、
衝任二脈が虚し、経血を約束できず、
定期的に下すことができないため、
あるいは長く蓄積され、
あるいは長く蓄積されずに、
突然大量に下り、山の崩れるが如く、
器の漏れるが如くであるため、崩漏という。
その原因を究めると、
六つの大きな要因がある。
一つは火熱、二つは虚寒、三つは労傷、
四つは気陥、五つは血瘀、六つは虚弱である。
(清・沈金鰲『婦科玉尺・巻五・崩漏』)


婦人脾胃虛損……皆由脾胃有虧,
下陷於腎,與相火相合,濕熱下迫,經漏不止。
(金·李杲
《東垣試效方・卷第四·婦人門·經漏不止有三》) 

訳:
婦人の脾胃虚損……すべて脾胃の虧損により、
腎に陥り、相火と合わさり、湿熱が下迫し、
経血が止まらない。
(金・李杲
『東垣試効方・巻第四・婦人門・経漏不止有三』)


五賁:一曰熱病下血,二曰寒熱下血,
三曰經脈未斷,為房事則血漏,
四日經來舉重,任脈下血,
五曰產後髒開經利。
五賁之病,外實內虛。
(唐·孫思邈
《備急千金要方·卷四·婦人方・赤白帶下崩中漏下》)

訳:
五賁:一に曰く熱病下血、二に曰く寒熱下血、
三に曰く経脈未だ断たず、房事すれば血が漏れる、
四に曰く月経中に重い物を持ち上げ、任脈から下血する、
五に曰く産後臓が開いて経血が利する。
五賁の病は、外は実で内は虚である。
(唐・孫思邈
『備急千金要方・巻四・婦人方・赤白帯下崩中漏下』)


將息失宜,勞役過度,喜怒不常,
大傷於肝,肝為血府,傷則不藏血,
而為崩中漏下。或悲思憂恐太甚,
陽氣內動,真陰虛,不能鎮守包絡相火,
故血走而崩。
(清·蕭賡六《女科經綸·卷七·崩帶門》)

訳:
養生が不適切で、
過度の労働、喜怒が一定せず、
肝を大いに傷つけ、
肝は血の府であり、傷つくと血を蔵せず、
崩中漏下となる。
あるいは悲しみ、
思い悩み、恐れが甚だしく、
陽気が内動し、真陰が虚し、
包絡の相火を鎮守できないため、
血が流れ出て崩れる。
(清・蕭賡六『女科経綸・巻七・崩帯門』)


崩有血熱而成者,有氣虛而成者。
血大至日崩中,或清或濁,
或純下淤血在內,遂淋灕不斷,謂之漏下。
漏下不止,致損於五臟,五臟之色,隨髒不同,
因虛而五色與血俱下,其狀白者如涕,
赤者如紅汁,黃者如爛瓜汁,青者如藍
色,黑者如乾血色,相雜而下也。
(隋·巢元方
《諸病源候論·卷三十八·婦人雜病諸侯·
崩中漏下五色候》)

訳:
崩には血熱によって起こるものと、
気虚によって起こるものがある。
血が大量に下るのを崩中といい、
あるいは清く、あるいは濁り、
あるいは純粋に瘀血が下り、
とめどなく流れ続けるのを漏下という。
漏下が止まらず、五臓を損ない、
五臓の色は臓によって異なる。
虚により五色と血が共に下り、
その状態は白いものは鼻水のように、
赤いものは赤い汁のように、
黄色いものは腐った瓜の汁のように、
青いものは藍色のように、
黒いものは乾いた血の色のように、
混じり合って下る。
(隋・巣元方『諸病源候論・巻三十八・
婦人雑病諸侯・崩中漏下五色候』)


夫婦人崩中者,由臟腑傷損,
衝脈任脈血氣俱虛故也。
衝任之脈為經脈之海,血氣之行,
外循經絡,內榮臟腑,若無傷損,
則陰陽和平而氣血調適,
經下依時。若勞動過多,致臟腑俱傷,
而衝任之氣虛不能約制其經血,
故忽然暴下,謂之崩中。
(宋·陳自明《新編婦人良方補遺大全·卷一·調經門》)

訳:
およそ婦人の崩中とは、臓腑の損傷により、
衝脈と任脈の血気が共に虚しているためである。
衝任の脈は経脈の海であり、血気の運行は、
外は経絡を巡り、内は臓腑を養う。
もし損傷がなければ、
陰陽は平和で気血は調和し、
月経は定期的である。
もし過度の労働により、臓腑が共に傷つき、
衝任の気が虚して経血を制御できないため、
突然大量に下るのを崩中という。
(宋・陳自明
『新編婦人良方補遺大全・巻一・調経門』)


夫婦人崩中漏下者,由勞傷血氣,
衝任之脈虛損故也。
衝脈、任脈為經絡之海,皆起於胞內。
……婦人經脈調適,則月水依時。
若勞傷衝任氣虛,不能制其經脈,
血非時而下,淋灕而不斷,謂之漏下也。
(宋·陳自明
《新編婦人良方補遺大全·卷一·調經門》)

訳:
およそ婦人の崩中漏下とは、
労傷により血気が損なわれ、
衝任の脈が虚損しているためである。
衝脈、任脈は経絡の海であり、
すべて胞内から始まる。
……婦人の経脈が調和していれば、
月経は定期的である。
もし労傷により衝任の気が虚し、
経脈を制御できず、
血が時期外に下り、
とめどなく流れ続けるのを漏下という。
(宋・陳自明
『新編婦人良方補遺大全・巻一・調経門』)


原其致病之由,有因衝任不能攝血者,
有因肝藏血者,有因脾統血者,
有因熱在下焦,迫血行者,
有因元氣大虛,不能收斂其血者,
又有淤血內阻,新血不能歸經而下者,
醫者依此類推,仿葉氏用筆靈活,於崩漏治法,
無余蘊矣。
(清·葉桂《臨證指南醫案·卷九·崩漏》)

訳:
その発病の原因を究めると、
衝任が血を摂れないことによるもの、
肝が血を蔵せないことによるもの、
脾が血を統制できないことによるもの、
下焦に熱があり、血を動かすことによるもの、
元気が大いに虚し、血を収斂できないことによるもの、
また瘀血が内に阻滞し、
新しい血が経絡に戻れずに下ることによるものがある。
医者はこれに基づいて類推し、
葉氏の筆の使い方の柔軟さに倣えば、
崩漏の治療法に余すところはないだろう。
(清・葉桂『臨証指南医案・巻九・崩漏』)


漏下者,由勞傷血氣,
衝任之脈虛報故也…………
若勞傷者,以衝任之氣虛損不能制其脈經,
故血非時而下,淋灕不斷,謂之漏下也。
(隋·巢元方
《諸病源候論 • 卷三十八·婦人雜病諸侯·漏下候》)

訳:
漏下とは、労傷により血気が損なわれ、
衝任の脈が虚損しているためである…
もし労傷であれば、衝任の気が虚損して
その脈経を制御できないため、
血が時期外に下り、
とめどなく流れ続けるのを漏下という。
(隋・巣元方
『諸病源候論・巻三十八・婦人雑病諸侯・漏下候』)


崩必是大怒傷肝,衝動血海;
或火盛之極,血熱沸騰而然。
漏則房勞過度,傷損衝任二脈,
氣虛不能約制經血;或其人平素多火,
血不能安,故不時漏洩。
(清·蕭賡六
《女科經綸·卷七·崩帶門·崩與漏有分證治法》)

訳:
崩は必ず大怒が肝を傷つけ、血海を衝動するか、
あるいは火盛が極まり、血熱が沸騰して起こる。
漏は房労過度により、衝任二脈を損傷し、
気虚が経血を制御できないか、
あるいはその人が平素から火が多く、
血が安定しないため、時期外に漏れ出る。
(清・蕭賡六
『女科経綸・巻七・崩帯門・崩と漏の分証治法』)


夫婦人崩中之病者,是傷損衝任之脈。
衝任之脈,皆起於胞內,
為經脈之海,勞傷過度,衝任氣虛,
不能統制經血,故忽然崩下,謂之崩中。
崩而內有淤血,故時淋灕不斷,
名曰崩中漏下也。
(宋·王懷隱
《太平聖惠方·卷第七十三·治婦人崩中漏下不止諸方》)

訳:
およそ婦人の崩中の病とは、
衝任の脈を損傷することである。
衝任の脈は、すべて胞内から始まり、
経脈の海であり、過度の労働により、
衝任の気が虚し、経血を統制できないため、
突然崩れ下るのを崩中という。
崩れて内に瘀血があるため、
時々とめどなく流れ続けるのを、
崩中漏下という。
(宋・王懐隠
『太平聖恵方・巻第七十三・
治婦人崩中漏下不止諸方』)


崩漏之疾,本乎一證。
……漏下者,淋灕不斷是也。
崩中者,忽然暴下,乃漏症之甚者。
其狀或如豚肝,或成五色,與血俱下,
又或如泔涕,如爛瓜汁,又或如豆羹汁,如藍靛色。
至有黑如乾血相雜,亦有純下淤血者,
此皆衝任虛損,喜怒勞役之過,
致傷於肝而然也。
久久不止,面黃肌瘦,虛煩口乾,
臍腹冷痛,吐逆不食,四肢虛困,
甚則為脹為腫。診其脈,寸口脈弦而大。
(宋·嚴用和
《重訂嚴氏濟生方·婦人門·崩漏論治》)

訳:
崩漏の病は、
本質的には一つの症候である。
……漏下とは、とめどなく流れ続けることである。
崩中とは、突然大量に下ることであり、
漏症の甚だしいものである。
その状態は、あるいは豚の肝臓のよう、
あるいは五色を呈し、血と共に下り、
またあるいは米のとぎ汁のように、
腐った瓜の汁のように、
またあるいは豆の羹の汁のように、藍色のように。
さらには乾いた血のように黒いものが混じり、
純粋に瘀血が下ることもある。
これらはすべて衝任の虚損、喜怒や労働の過度により、
肝を傷つけたためである。
長く止まらず、顔色が黄色く痩せ、虚煩口渇、
臍腹の冷痛、吐逆不食、四肢の虚困、
甚だしきは脹れや腫れとなる。
その脈を診ると、寸口脈は弦で大である。
(宋・厳用和
『重訂厳氏済生方・婦人門・崩漏論治』)


若血下過多,真陰走耗,
遂致頭暈眼花,氣乏怔忡,
身體羸瘦,飲食減少,腹內冷痛,
四肢無力,驚惕恐怖,此其證也。
……今既虛極而又寒極,
血寒則凝而不運,是以崩中不已,
狀如豚肝,或下五色,或與血俱下,或如涕,
或如豆羹汁,或如藍靛色,或純下淤血,
此血寒之極所致,若以謂血熱致崩而
用涼藥誤矣。
(宋·嚴用和
《重訂嚴氏濟生方・婦人門·崩漏論治》)

訳:
もし血が過剰に下り、
真陰が消耗し尽くすと、

めまいや眼精疲労、気力不足、動悸、
身体の衰弱、食欲不振、腹部の冷痛、
四肢の無力、驚きや恐怖が生じる。
これがその証である。
……今や極度に虚し、
また極度に冷えているため、

血が冷えると凝り固まって運行せず、
そのため崩中が止まらず、
豚の肝臓のような状態、
あるいは五色を下し、

あるいは血と共に下り、
あるいは鼻水のように、

あるいは豆の羹の汁のように、
あるいは藍色のように、

あるいは純粋に瘀血を下す。
これは血の冷えが
極度に達したことによるものであり、

もし血熱による崩と誤解して
涼薬を用いると誤りである。
(宋・厳用和
『重訂厳氏済生方・婦人門・崩漏論治』)


崩漏之疾,本乎一證。
輕者謂之漏下,甚者謂之崩中。
且平居婦人,經脈調適,衝任二脈,
互相滋養,陰陽二氣,不相偏勝,則月事以時下。
倘若將理失宜,喜怒不節,疲極過度,大傷於肝。
蓋肝為血之府庫,喜怒勞役,一或傷之,
肝不能藏血於宮,宮不能傳血於海,所
以崩中漏下。漏下者,淋灕不斷是也。
崩中者,忽然暴下,乃漏證之甚者。
(宋·嚴用和
《重訂嚴氏濟生方・婦人門·崩漏論治》)

訳:
崩漏の病は、本質的には一つの症候である。
軽いものを漏下といい、重いものを崩中という。
また平素の婦人は、経脈が調和し、衝任二脈が、
互いに滋養し合い、陰陽二気が、
偏勝しないため、月経は定期的である。
もし養生が不適切で、喜怒が節度を失い、
過度の疲労により、肝を大いに傷つけると。
そもそも肝は血の府庫であり、
喜怒や労働が、一度でも肝を傷つけると、
肝は血を宮に蔵せず、
宮は血を海に伝えられないため、
崩中漏下となる。
漏下とは、とめどなく流れ続けることである。
崩中とは、突然大量に下ることであり、
漏症の甚だしいものである。
(宋・厳用和
『重訂厳氏済生方・婦人門・崩漏論治』)


(崩漏)以屬虛、屬熱者為多、
屬寒、屬瘀者較少。
(劉強等
《名老中醫醫話·馬龍伯醫話·崩漏證治漫談》)

訳:
(崩漏)は虚、熱に属するものが多く、
寒、瘀に属するものは比較的少ない。
(劉強等
『名老中医医話・馬龍伯医話・崩漏証治漫談』)


凡病先明虛、實、寒、熱,
如崩漏症,有虛、有實、有寒,有熱。
虛者,主於血虛、氣虛、陰虛、陽虛;
實者,主於污淤惡血、痰涎郁滯;
虛則為寒為冷;實則為火為熱。
此證之不可不先辨者也。
(清·蕭賡六《女科經綸·卷七·崩帶門》)

訳:
およそ病はまず虚、実、寒、熱を明らかにする。
崩漏症のように、
虚があり、実があり、寒があり、熱がある。
虚とは、主に血虚、気虚、陰虚、陽虚を指す。
実とは、主に汚れた瘀血、痰涎の鬱滞を指す。
虚であれば寒となり冷えとなる。
実であれば火となり熱となる。
これはまず弁別しなければならない証である。
(清・蕭賡六
『女科経綸・巻七・崩帯門』)


崩漏不止之證,先因心火亢甚,
於是血脈泛溢,以致肝實而不能納血,
出納之用廢。
(清·馮兆張《馮氏錦囊秘錄·女科·崩漏門》)

訳:
崩漏が止まらない証は、まず心火が亢進し、
そのため血脈が溢れ出し、肝が実して血を納められず、
出納の機能が廃れる。
(清・馮兆張『馮氏錦囊秘録・女科・崩漏門』)


如崩久成漏,連年不休者,
此中氣下陷,元氣不固也。
(明·萬全《萬氏婦人科·漏》)

訳:
もし崩が長く漏となり、
連年止まない者は、これは中気が下陥し、
元気が固まらないためである。
(明・万全『万氏婦人科・漏』)


濕熱下迫,經漏不止,其色紫黑,
如夏月腐肉之臭。
(金·李杲
《東垣試效方·卷第四·婦人門·經漏不止有三》)

訳:
湿熱が下迫し、経血が止まらず、
その色は紫黒色で、
夏の腐った肉の臭いがする。
(金・李杲
『東垣試効方・巻第四・婦人門・経漏不止有三』)


婦人崩中之病,皆因中氣虛,
不能收斂其血,加以積熱在里,迫血妄行,
故令經血暴下而成崩中。
崩久不止,遂成漏下。
(明·萬全《萬氏婦人科·崩》)

訳:
婦人の崩中の病は、すべて中気虚により、
血を収斂できず、さらに積熱が内にあり、
血を妄行させるため、
経血が突然大量に下り、崩中となる。
崩が長く止まらず、遂に漏下となる。
(明・万全『万氏婦人科・崩』)


崩漏日久,不僅營血大虧,氣亦隨弱,
在氣虛證更易導致陽虛。
(秦伯未等
《中醫臨證備要·婦科症狀·經量過多》)

訳:
崩漏が長引くと、
営血が大きく虧損するだけでなく、
気もそれに伴い弱くなり、
気虚証はさらに陽虚を招きやすい。
(秦伯未等
『中医臨証備要・婦科症状・経量過多』)


血大至日崩,或清或濁,
或純下淤血,勢不可止,有崩腹痛,
人多疑惡血未盡,又見血色黑,
愈信惡血之說,不敢止截。
大凡血之為患,欲出未出之際,
停在腹中,即成淤血,以淤為惡,
又焉知之不為虛冷乎?
(清·蕭賡六《女科經綸·卷七·崩帶門》)

訳:
血が大量に下るのを崩といい、
あるいは清く、あるいは濁り、
あるいは純粋に瘀血が下り、
勢い止めることができない。
崩腹痛があり、
多くの人は悪血が尽きていないと疑い、
また血色が黒いのを見て、
ますます悪血の説を信じ、
止めることをためらう。
およそ血の患いは、
出ようとしてまだ出ていない時に、
腹中に停滞すると、即ち瘀血となる。
瘀を悪と見なすが、それが虚冷によるもの
ではないとどうして知ることができようか?
(清・蕭賡六『女科経綸・巻七・崩帯門』)


崩中大下之血,皆絡脈中好血,
失其故道,橫決無度,本非月事應下之血。
(張山雷
《沈氏女科輯要箋正月事不來》)

訳:
崩中により大量に下る血は、
すべて絡脈中の良い血であり、
その本来の道を失い、
無制限に横決するもので、
本来月経として下るべき血ではない。
(張山雷
『沈氏女科輯要箋正月事不来』)


婦人經血,終於七七之數,數外暴下,
《經》曰:“火主暴速”,亦因暴喜暴怒,
憂結驚恐所致然也,慎不可作冷病治之,
用峻熱之藥則死。
(清·蕭賡六
《女科經綸·卷七·崩帶門》)

訳:
婦人の経血は、七七の数で終わる。
その数を超えて突然下るのは、
『経』に曰く「火は暴速を主る」とあり、
これもまた突然の喜びや怒り、
憂鬱や驚恐によって引き起こされるものである。
決して冷病として治療してはならず、
峻烈な熱薬を用いると死に至る。
(清・蕭賡六
『女科経綸・巻七・崩帯門』)


女子血崩,因腎臟氣化不固,
而衝任滑脫也。
(張錫純《醫學衷中參西錄·論血崩治法》)

訳:
女子の血崩は、腎臓の気化が固まらず、
衝任が滑脱するためである。
(張錫純『医学衷中参西録・論血崩治法』)


崩漏之證,有陰陽;若婦人年五十後,
經止數年,忽然又行,兼腹痛,或身熱口渴者,
曰崩,此陰證也;若婦人年三十四十後,
經行三十日,湧暴不止者,曰漏,此陽證也。
(清·蕭賡六《女科經綸·卷七·崩帶門》)

訳:
崩漏の証には陰陽がある。
もし婦人が五十歳を過ぎて、
月経が数年止まった後、突然再び始まり、
腹痛を伴うか、あるいは身熱口渇がある者を、
崩といい、これは陰証である。
もし婦人が三十歳から四十歳を過ぎて、
月経が三十日間続き、とめどなく湧き出る者を、
漏といい、これは陽証である。
(清・蕭賡六『女科経綸・巻七・崩帯門』)


淋灕不斷名為漏,忽然大下謂之崩。
(清·吳謙等
《醫宗金鑒·卷四十五·婦科心法要訣·崩漏門》)

訳:
とめどなく流れ続けるのを漏といい、
突然大量に下るのを崩という。
(清・呉謙等
『医宗金鑒・巻四十五・婦科心法要訣・崩漏門』)


陰虛陽搏謂之崩,血滲氣洩謂之漏。
(清·徐大椿《女科指要·崩漏門》)

訳:
陰虚陽搏を崩といい、血滲気洩を漏という。
(清・徐大椿『女科指要・崩漏門』)


凡非時血行,淋灕不已,謂之漏下;
忽然暴下,若山崩然,謂之崩中。
(清·陳夢雷等編
《圖書集成醫部全錄·卷三百九十五·
婦人崩漏門·李梃醫學入門·總論證治》)

訳:
およそ時期外に血が流れ、
とめどなく続くのを漏下といい、
突然大量に下り、
まるで山が崩れるようなのを崩中という。
(清・陳夢雷等編
『図書集成医部全録・巻三百九十五・
婦人崩漏門・李梃医学入門・総論証治』)


崩證與漏證有別:漏者病之淺也,
亦將成崩之兆也;崩則勢大而來如決堤,
漏則勢小而淋灕不止。
(清·鄭壽全《醫理真傳·卷四》)

訳:
崩証と漏証には区別がある。
漏は病が浅いものであり、
また崩となる兆候でもある。
崩は勢いが大きく堤防が決壊するように来るが、
漏は勢いが小さく、とめどなく流れ続ける。
(清・鄭寿全『医理真伝・巻四』)


崩漏之疾,本乎一證,然有輕重之別焉。
輕者謂之漏下,漏下者淋瀝不斷是也。
重者謂之崩中,忽然暴下,乃漏證之甚者也。

(宋·嚴用和
《重訂嚴氏濟生方·婦人門·崩漏論治》)

訳:
崩漏の病は、
本質的には一つの症候であるが、
軽重の区別がある。
軽いものを漏下といい、
漏下とはとめどなく流れ続けることである。
重いものを崩中といい、突然大量に下ることであり、
漏証の甚だしいものである。
(宋・厳用和
『重訂厳氏済生方・婦人門・崩漏論治』)


崩漏者,非經期而下血之謂也,
少者名曰漏下,多則名為血崩。
(清·唐宗海《血證論·卷四·崩帶》)

訳:
崩漏とは、
月経期以外に出血することをいう。
少ないものを漏下といい、
多いものを血崩という。
(清・唐宗海『血証論・巻四・崩帯』)


関連記事

湿瘡ともいう。皮膚に紅斑・丘疹・びらん・痂皮などの様々な損傷が現れる皮膚病のこと。浸淫瘡,黃連粉主之。(漢·張機《金匱要略·瘡癰腸癰浸淫脈證並治》)訳:浸淫瘡には、黄連粉が主となる。(漢・張機『金匱要略・[…]

湿疹
関連記事

尿失禁のこと。3歳以上の小児の寝小便癖のこと。小便自出而不禁者,謂之遺尿;睡中自出者,謂之尿床。此皆腎與膀胱虛寒也。(清·陳復正《幼幼集成·小便不利證治》)訳:小便が自然に出て止まらないものを遺尿といい、[…]

遺尿
関連記事

 帯下とは、膣から流出する粘稠性の物質。オリモノ・こしけと呼ばれ正常なものは無色透明無臭で少量。この場合は病ではない。帶下之證,因濕熱流注於帶脈而下濁液,故曰帶下。(清·孟葑《仁壽鏡·卷一下[…]

帯下
関連記事

腹が膨張する病証のことで脹満ともいう。腹滿不減,減不足言,當下之,宜大承氣湯。(漢·張機《傷寒論·辨陽明病脈證並治》)訳:腹満にして減ぜず、減ずるも言うに足らず、直ちにこれを下すべし、大承気湯に宜し。[…]

腹満