【東洋医学用語】譫妄・譫語

譫妄・譫語

譫妄とは意識が混濁して
とりとめもない事を言うと同時に
恐怖感や興奮して
暴れるといった症状を伴う。

譫語とは夢の中でうわごとを言い
言葉に論理的な一貫性がないこと


譫者,多言也;妄者,虛妄也。
譫妄者,要有見聞而語言無倫也,
皆邪氣盛正氣虛弱,神識不清之所致。
(明·萬全(痘疹心法·譫妄》)

訳:
譫者(せんしゃ)は多言を意味し、
妄者(もうしゃ)は虚妄を意味する。
譫妄(せんもう)とは、
見聞があっても言葉にまとまりがなく、
いずれも邪気が盛んで正気が虚弱になり、
意識が混濁することによって引き起こされる。
(明・万全『痘疹心法・譫妄』)


汗出譫語者,以有燥屎在胃中,
此為風也。須下者,過經乃可下之。
下之若早,語言必亂,以表虛里實故也。
下之則愈,宜大承氣湯。
(漢·張機《傷寒論·辨陽明脈證並治》)

訳:
汗が出て譫語(せんご)を言う者は、
胃の中に燥屎(そうし)があるためで、
これは風邪である。下すべきであるが、
経絡を過ぎてから下すのがよい。
もし早く下すと、言葉が乱れるだろう。
これは表が虚で裏が実であるためだ。
下せば治る。大承気湯が適している。
(漢・張機『傷寒論・辨陽明脈證並治』)


二陽並病,太陽證罷,但發潮熱,
手足漿漿汗出,大便難而譫語者,
下之則愈,宜大承氣湯。
(漢·張機《傷寒論·辨陽明病脈證並治》)

訳:
二陽が並び病み、太陽病の証が治まったが、
潮熱が発し、手足に汗がじっとり出て、
大便が難しく譫語を言う者は下せば治る。
大承気湯が適している。
(漢・張機『傷寒論・辨陽明病脈證並治』)


三陽合病,腹滿身重,難於轉側,
口不仁面垢,譫語遺尿
發汗則譫語;下之則額上生汗,手足逆冷。
若自汗出者,白虎湯主之。
(漢·張機《傷寒論·辨陽明病脈證並治》)

訳:
三陽が合わさって病み、
腹が張って体が重く、寝返りが打ちにくく、
口に味がなく顔が汚れており、
譫語を言い、遺尿がある。
発汗させると譫語を言い、
下すと額に汗が出て手足が冷たくなる。
もし自汗が出る者は、
白虎湯を主とする。
(漢・張機『傷寒論・辨陽明病脈證並治』)


譫語者,言語謬,非常所見也,
邪熱亂其神明故也。
有燥,有瘀血,有凝痰,有血熱。
(清·周學海《形色外診簡摩·聞法》)

訳:
譫語とは、言葉が狂妄で、
通常見られないものであり、
邪熱がその精神を乱すためである。
燥、瘀血、凝痰、血熱がある。
(清・周学海『形色外診簡摩・聞法』)


譫語者,顛倒錯亂,言出無倫,
常對空獨語,如見鬼狀。
鄭聲者,鄭重頻煩,語雖謬,
而鄭重頻頻,諄諄不已。
(清·喻嘉言
《尚論後篇·陽明少陽各方》)

訳:
譫語とは、言葉が支離滅裂で、
まとまりがなく、常に空に向かって独り言を言い、
まるで幽霊を見ているかのようである。
鄭声(ていせい)とは、鄭重(ていちょう)で
頻繁に繰り返し、言葉は狂妄であっても、
鄭重で頻繁に、しつこく繰り返す。
(清・喩嘉言
『尚論後篇・陽明少陽各方』)


譫語者,語言狂妄也。
(清·秦之楨《傷寒大白·譫語》)

訳:
譫語とは、言葉が狂妄であることである。
(清・秦之楨『傷寒大白・譫語』)


夫實則譫語,虛則鄭聲。
鄭聲者,重語也。
直視譫語,喘滿者死,下利者亦死。
(漢·張機《傷寒論·辨陽明病脈證並治》)

訳:
実証であれば譫語を言い、
虚証であれば鄭声を言う。
鄭声とは、言葉を繰り返すことである。
直視して譫語を言い、
喘満(ぜんまん)する者は死に、
下痢する者も死ぬ。
(漢・張機『傷寒論・辨陽明病脈證並治』)


聲音出於腎,成於肺,
而其辨言語者,則出於心。
心欲言而活動音出,遂成詞句。
心氣實,則神煩亂,而言語多妄,故為譫語。
心氣虛,則神顛倒,而言語重復,故為鄭聲。
譫語當攻,鄭聲不當攻,
譫語多生;兼鄭聲則多死。
(清·唐容川
《傷寒論淺注補正·卷二· 陽明篇》)

訳:
声は腎から出て、肺で形成され、
その言葉を弁別するのは心から出る。
心が言おうとして音が活動して出て、
ついに言葉となる。
心気が実であれば、精神が煩乱し、
言葉が多く狂妄になるため、譫語となる。
心気が虚であれば、精神が顛倒し、
言葉が重複するため、鄭声となる。
譫語は攻めるべきであり、
鄭声は攻めるべきではない。
譫語は多く生き残り、
鄭声を兼ねると多く死ぬ。
(清・唐容川
『傷寒論浅注補正・巻二・陽明篇』)


有獨語認作鄭聲者。
傷寒邪熱未解,睡中自語名獨語,精神昏慣也。
若汗下太過,聲出咽中,
無力接續名鄭聲,正氣虛極也。
(清·張璐《傷寒緒論·總論·審證》

訳:
独語を鄭声と誤認する者がいる。
傷寒の邪熱がまだ解けておらず、
眠っている間に独り言を言うのを独語といい、
精神が昏迷している状態である。
もし発汗や下剤が過度であれば、
喉から声が出て、続ける力がなく、鄭声といい、
正気が極度に虚弱になっている状態である。
(清・張璐『傷寒緒論・総論・審證』)


實則譫語,陽明熱甚,上乘於心,
亂言無次,其聲高朗,邪氣實也。
虛則鄭聲,精神衰乏,不能自主,
語言重復,其聲微短,正氣虛也。
(清·吳謙等
《醫宗金鑒·訂正傷寒論注·陽明全篇》)

訳:
実証であれば譫語を言い、
陽明の熱が甚だしく、心に上って、
言葉が乱れてまとまりがなく、
その声は高く朗らかで、邪気が実である。
虚証であれば鄭声を言い、
精神が衰弱して自律できず、
言葉が重複し、
その声は微かで短く、正気が虚である。
(清・呉謙等
『医宗金鑑・訂正傷寒論注・陽明全篇』)


鄭聲,汗後人及久病人,
聲轉者是也,為重語也。鄭為聲轉也。
若聲重而轉本音者,亦是也。
止為正氣虛而不全,故使轉聲而不正也。
(明·劉純《傷寒治例·鄭聲》)

訳:
鄭声とは、発汗後や長患いの人が、
声が転じることであり、
言葉を繰り返すことである。
鄭とは声が転じることである。
もし声が重く、元の音に転じる者もそうである。
ただ正気が虚弱で不完全であるため、
声が転じて正しくないのだ。
(明・劉純『傷寒治例・鄭声』)


譫語與鄭聲,本為一證矣。
屬實者為譫語,屬虛者為鄭聲。
(清·何汝夔《傷寒原旨· 陽明篇》)

訳:
譫語と鄭声は、もともと一つの証である。
実証に属するものを譫語とし、
虚証に属するものを鄭声とする。
(清・何汝夔『傷寒原旨・陽明篇』)


鄭聲者,謂虛而聲轉無力,
不相接續,造字出於喉中,若鄭聲之輕怯也;
又重語疊出,說過又說,亦謂鄭聲。
蓋因汗下後失其正音,精氣衰奪之候。
(清·張璐《傷寒緒論·卷下·鄭聲》)

訳:
鄭声とは、虚弱で声が弱々しく転じ、
言葉が続かず、喉から文字が出てくるような、
鄭声の軽々しい状態である。
また、言葉を重ねて繰り返し、
言ったことをまた言うのも鄭声という。
これは発汗や下剤の後、
正しい声が出なくなり、
精気が衰弱した兆候である。
(清・張璐『傷寒緒論・巻下・鄭声』)


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