【東洋医学用語】経閉

経閉

不月、または閉経ともいう。
18歳を過ぎても初潮が来潮しないもの、
あるいは月経が3カ月以上連続して中断し
各種の全身症状を伴うものを指す。


月事不來者,胞脈閉也,胞脈者,
屬心而絡於胞中。
(戰國·《黃帝內經素問·評熱病論》)

訳:
月経が来ないのは、
胞脈が閉塞しているためである。
胞脈は心に属し、胞中と連絡している。
(戦国・『黄帝内経素問・評熱病論』)


月事不來者,胞之絡脈閉也。
胞脈者屬心,而絡於胞中,氣上迫肺,
心氣不得下通,或寒閉其經,熱壅其絡,
痰凝子宮,氣滯胞脈,而血瘀血枯,
皆能令女子經閉。
(清·徐大椿《女科指要・經候門》)

訳:
月経が来ないのは、
胞の絡脈が閉塞しているためである。
胞脈は心に属し、胞中と連絡している。
気が上逆して肺を圧迫し、
心気が下に通じない、
あるいは寒邪が経絡を閉塞し、
熱邪が絡脈を壅滞させ、痰が子宮に凝結し、
気が胞脈に滞り、血瘀や血枯が生じる。
これらすべてが女性の経閉が
引き起こす可能性がある。
(清・徐大椿『女科指要・経候門』)


論婦人經閉不通,此履霜堅冰之候,
非一朝一夕之故也,
其初多由於先後期而致,或多或少,
或一月兩度,或衄血吐血,
或有瘀血閉塞胞門,發蒸發熱,
久之遂至經年不行。
其所以致病之由,多是血少,
一切寒涼破血之劑,不可輕用。
(清·楊西山《弄丸心法·卷八·婦科》)

訳:
婦人の経閉不通について論じる。
これは履霜堅氷の候であり、
一朝一夕の原因ではない。
その初めは、月経周期の前後不順によることが多く、
量が多いか少ないか、あるいは月に二度来るか、
鼻血や吐血があるか、
あるいは瘀血が胞門を閉塞し、
発蒸発熱を伴うか、
久しくして遂に何年も来なくなる。
その発病の原因は、
多くは血が少ないことであり、
一切の寒涼破血の薬は
軽々しく用いるべきではない。
(清・楊西山『弄丸心法・巻八・婦科』)


婦人女子,閉經不行,其候有三:
乃脾胃損傷,飲食減少,
氣耗血枯而不行者,法當補其脾胃,
養其血氣,以待氣充血生,經自行矣……
一則憂愁思慮,惱怒怨恨,
氣郁血滯,而經不行者,
法當開郁氣,行滯血而經自行……
則軀肢迫塞,痰涎壅滯,而經不行者,
法當行氣導痰,使經得行。
(明·萬全《萬氏婦人科·經閉不行》)

訳:
婦人女子の経閉不通には三つの候がある。
すなわち脾胃の損傷により、飲食が減少し、
気が消耗し血が枯渇して
月経が来ない場合は、脾胃を補い、血気を養い、
気が充実し血が生成されるのを待てば、
月経は自然に来るだろう……
一つは憂愁思慮、怒り恨みにより、
気が鬱結し血が滞り、月経が来ない場合は
鬱気を散らし、滞った血を巡らせれば
月経は自然に来るだろう…
一つは躯肢が閉塞し、
痰涎が壅滞して月経が来ない場合は、
気を巡らせ痰を導き出せば、
月経が来るようになるだろう。
(明・万全『万氏婦人科・経閉不行』)


若經閉之證,腹無脹痛,起居如常,
或發熱體倦,咳嗽吐痰,或飲食減少,
或自汗盜汗,皆虛也。
(清·孫德潤《醫學匯海·卷二十一·經閉虛閉》)

訳:
もし経閉の証で、腹部に脹痛がなく、
起居が常と変わらず、あるいは発熱や倦怠感、
咳や痰、あるいは飲食の減少、
あるいは自汗や盗汗がある場合は、
すべて虚である。
(清・孫徳潤『医学匯海・巻二十一・経閉虚閉』)


婦人女子,經脈不行多有脾胃傷而致,
不可便作經閉死血,輕用通經破血藥。
凡遇此證,須審其脾胃何如。
……若果脾胃無病,有血塊凝滯,
方用行血通經之劑。
(清·蕭賡六《女科經綸·月經門》)

訳:
婦人女子の経脈不通は、
脾胃の損傷によることが多い。
安易に経閉死血と見なし、
軽々しく通経破血薬を用いるべきではない。
この証に遭遇した場合は、
まず脾胃の状態をよく診る必要がある。
……もし本当に脾胃に病がなく、
血塊が凝滞している場合は、
初めて行血通経の薬を用いる。
(清・蕭赓六『女科経綸・月経門』)


脾胃傷損,飲食減少,氣耗血枯,
而經不行,宜補脾胃養氣血,
氣充血生經自調矣。
切忌用通經藥,恐損中氣,
陰血亦乾,誤成癆瘵,則不治矣。
(清·《竹林寺女科秘要·卷四》

訳:
脾胃が損傷し、飲食が減少し、
気が消耗し血が枯渇して月経が来ない場合は、
脾胃を補い気血を養うべきである。
気が充実し血が生成されれば
月経は自然に調和するだろう。
通経薬の使用は厳に慎むべきである。
中気を損ない、陰血も枯渇し
誤って労瘵を招けば、治癒不可能となる。
(清・『竹林寺女科秘要・巻四』)


蓋經閉不行,由於熱結者少,
由於寒結者多。其痰結阻塞血道,
致經不行者間有一二。
(明·陳文昭《陳素庵婦科補解・
調經不宜過用大辛大熱藥論補按》)

訳:
経閉不通は熱結によるものは少なく、
寒結によるものが多い。
痰結が血道を閉塞し、
月経が来なくなるものは
稀に一・二例ある。
(明・陳文昭『陳素庵婦科補解・
調経不宜過用大辛大熱薬論補按』)


經閉要言:血虛血枯,血瘀血隔,
皆足以造成經閉不通。
然經閉雖同,虛實迥異。
枯之與隔,有如水火。
夫隔者血本不虛,或氣或寒,或痰或積,
一有所逆,月事不來,病發於暫。
其證屬實,必通之,血下而始愈,故可攻也。
枯者血海枯乾,化源垂絕,其來有漸,
其症無形,脾胃氣衰,衝經內竭。
血既枯矣,則須補養營氣,
使其血充,經水自行。
倘勉強通之,則枯將益枯。
(劉強等《名老中醫醫話·
馬龍伯醫話·崩漏證治漫談》)

訳:
経閉の要点:
血虚血枯、血瘀血隔は、
すべて経閉不通を引き起こす可能性がある。
しかし、経閉は同じでも虚実は大きく異なる。
枯と隔は水と火のように対立する。
隔とは血が本来虚ではないが、
気、寒、痰、あるいは積滞のいずれかが
逆行することで、月経が来なくなる。
病は一時的に発症する。
その証は実であり、必ず通じさせるべきである。
血が下りて初めて治癒するため
攻めることができる。
枯とは、血海が枯渇し、
化源が絶えようとしている状態である。
その発症は漸進的で、
その症状は無形である。
脾胃の気が衰え、衝経が内的に枯渇する。
血がすでに枯渇しているため、営気を補養し、
血を充実させれば、月経は自然に来る。
もし無理に通じさせようとすれば、
枯はますます枯渇するだろう。
(劉強等『名老中医医話・
馬龍伯医話・崩漏証治漫談』)


經閉有虛有實,實則少腹多痛,
脈亦非革即澀;虛則少腹如綿,
脈亦非細即微。
(清·曹仁伯《琉球百問·琉球百問》)

訳:
経閉には虚と実がある。
実の場合は少腹に痛みが多く、
脈も革脈か渋脈である。
虚の場合は少腹が綿のように柔らかく、
脈も細脈か微脈である。
(清・曹仁伯『琉球百問・琉球百問』)


血枯一證,與血隔相似,皆經閉不通之候。
然而枯之與隔,則相反有如冰炭。
夫枯者,枯竭之謂,血虛之極也。
隔者,阻隔之謂,血本不虛,
而或氣或寒或積有所逆也。
隔者病發於暫,其證則或痛或實,
通之則血行而愈,可攻者也。
枯者其來也漸,衝任內竭,
其證無形,必不可通也。
(明·張景岳《類經·疾病類·血枯》)

訳:
血枯の証は、血隔と似ており
ともに経閉不通の候である。
しかし枯と隔は氷と炭のように正反対である。
枯とは、枯渇を意味し、血虚の極致である。
隔とは、阻隔を意味し、血は本来虚ではないが、
気、寒、あるいは積滞のいずれかが
逆行している状態である。
隔は病が一時的に発症し、
その証は痛みや実を伴うことがある。
通じさせれば血が巡って治癒するため、
攻めることができる。
枯はその発症が漸進的で
衝任が内的に枯渇し、
その証は無形であり
決して通じさせてはならない。
(明・張景岳『類経・疾病類・血枯』)


因經閉敗血停積五臟,
流入四肢作浮腫者,不可誤認水氣,
宜調其經,經調則浮腫自散矣。
(清·《竹林寺女科秘要·卷四》)

訳:
経閉により敗血が五臓に停滞し、
四肢に流れ出て浮腫を呈する場合は、
水気と誤認してはならない。
経を調えるべきである。
経が調えば、浮腫は自然に消散するだろう。
(清・『竹林寺女科秘要・巻四』)


經停而發腫脹,血郁者多,
宜從血分疏利。
(清·何昌齡《何端叔醫案》)

訳:
月経が止まって
腫脹を発する場合は血鬱が多い。
血分から疎利すべきである。
(清・何昌齢『何端叔医案』)


女人屬氣分賬者,
先病脹而後經水斷,心胸堅大,
病發於上,宜治氣分。
(明·李中梓《病機沙篆·脹滿》)

訳:
女性が気分脹を患う場合、
まず脹病を発し、その後月経が止まり、
心胸が堅大になる。
病が上部に発する場合は、
気分を治療すべきである。
(明・李中梓『病機沙篆・脹満』)


夫女子不月,
既由於胃腑有病,不能消化飲食。
治之者,自當調其脾胃,
使之多進飲食,以為生血之根本。
(張錫純《醫學衷中參西錄·治女科方》)

訳:
夫、女子の無月経は胃腑に病があり、
飲食を消化できないことによる。
治療する者は当然その脾胃を調え、
飲食を多く摂らせて
生血の根本とすべきである。
(張錫純『医学衷中参西録・治女科方』)


婦人女子經脈不行,
有脾胃損傷而致者,不可便認作經閉血死,
輕用通經破血之藥……脾旺則能生血,
而經自行矣。
(明·王綸《明醫雜著·讀醫論》)

訳:
婦人女子の経脈不通は、
脾胃の損傷によるものがある。
安易に経閉血死と見なし、
軽々しく通経破血の薬を用いるべきではない
……脾が旺盛であれば血を生成でき、
月経は自然に来るだろう。
(明・王綸『明医雑著・読医論』)


月水不行為經閉,有陰虛,陽虛,
郁結,痰滯諸證。
主治之法,總宜分辨明晰,
不可用破血之藥,損傷真氣。
(清·劉仕廉《醫學集成·卷三·經閉》)

訳:
月水不来は経閉であり、陰虚、陽虚、
鬱結、痰滞などの証がある。
主治の法は、常に弁別を明確にし、
破血の薬を用いて真気を損傷してはならない。
(清・劉仕廉『医学集成・巻三・経閉』)


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